遺伝子操作されたDNAを放出するな。ゲノム編集規制に向かう世界

 日本では毎日のように「ゲノム編集が未来を開く」的なニュースに溢れている。しかし、世界では大きく違う動きがある。

 米国の認証機関NSFインターナショナルはゲノム編集を遺伝子組み換えとして扱うことを決定した(1)。すでに米国の広く普及した民間認証であるNon-GMO Projectが同様の判断をしているが、これで米国の主な認証ラベルはゲノム編集はNon-GMOではなく、従来の遺伝子組み換えと同等の扱いをすることになる。EUやニュージーランドも同様の方向を打ち出している。

 ということは先進国で無防備なのはほぼ日本だけ、ということになる。

 ゲノム編集は研究ツールや診断ツールとしては遺伝子が持つ機能を調べたり、感染を調べたりする上で、有効性はあるだろうが、ゲノム編集によって遺伝子操作したものを環境中に出すことは一切すべきではない。

 問題の深刻さを物語るのはこのゲノム編集で現在、一番使われているCRISPR-Cas9を使ったゲノム編集方法を開発したエマニュエル・シャルパンティエのジェニファー・ダウドナ自身がこのゲノム編集の規制を求めている事実に現れている。

 シャルパンティエは他の科学者と共にCRISPR技術の人間の生殖細胞への適用を国際的に5年間中止するモラトリアムを求める声明を今年3月に発表した(2)。もう一人のダウドナはモラトリアムでは止まらないとして、政府が規制に乗り出す必要を訴えている(3)。

 彼女たちは怖れている。つまりゲノム編集ベビーが生まれ、取り返せない問題が生まれた時に、倫理が問われ、ゲノム編集技術が葬られてしまうことを。そして、ゲノム編集の規制を求めること自身は正しい。しかし、彼女たちは人間の生殖細胞以外の分野での活用をあまりに楽観し過ぎている。深刻な問題は人間の生殖細胞だけでなく、ゲノム編集した微生物(非生物とされるウイルス含めて)、植物、動物でも当然起こりうる。ゲノム編集されたDNAを生態系の中に放つことを止めなければならないのだ。

 人は遺伝子の基本機能すらまだ十分につかんでいない。こんな状況で遺伝子を操作しまえば、その遺伝子は人の手を離れて生態系を狂わせていく。その狂わせた生態系を元に戻す方法はまったくない。放出された放射性物質を無化する方法が存在しないように。

 そんな中、米国トランプ政権はゲノム編集を一切規制せずに生産することを承認したばかりかそれを世界の政府に押しつける政策を展開している。その政策を忠実になぞるのが残念なことに日本政府である。

 この事態に対して、自然界のDNAを守れ、というグローバルなキャンペーンが始まっている。提唱しているのは『遺伝子組み換えルーレット』を作ったジェフリー・スミスさんのInstitute for Responsible Technology(3)。

 日本でゲノム編集食品の流通、あるいはゲノム編集作物の耕作、ゲノム編集生物の環境中への放出を止めるために、何から始めようか?

(1) NSF’s revised non-GMO standard defines gene editing and synthetic biology as genetic engineering

(2) Adopt a moratorium on heritable genome editing

(3) One of CRISPR’s inventors has called for controls on gene-editing technology

(4) Protect Nature Now

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