連休明けにも政府は種苗法を改定しようとしている。この問題に関して『現代農業』2020年4月号の特集がすばらしいのでぜひ読んでいただきたい。
今回の種苗法改定にはさまざまな意味で日本の社会の根幹を崩す可能性があることを指摘してきた。
そんな法案を農家不在、地方公聴会も開催不能な状況で即決していいはずはない。しかし、政府はもうやる気であるという。数で押し切られれば、通ってしまう。
もう手がないのだろうか? いや、まだぎりぎり抵抗線を引くことは可能だろう。
米国でもEUでも自家増殖禁止が厳しいが一方で主食など重要な作物は例外となっている。EUの場合は15ヘクタール未満の農家は許諾料の支払いは免除となる。でも今回の種苗法改正案にはそのような規定がない。
なぜ日本だけ例外なしなのか、そのままというのはありえない話だ。現実と離れた法律は形骸化せざるをえない。
『現代農業』の特集で農水省の知的財産課は登録品種の自家増殖の許諾に関してこう応えている。
「そもそも、許諾なく自家増殖できると、育成者権側が最初からそう決めている品種は、今でもあります。例えば、県内の農家であれば自由ですよと、そういった品種は新たに許諾を得たり、許諾料を払う必要はありません」
つまり都道府県の公的種苗事業で育成された登録品種でも、許諾不要とするものはこれまで通り、自家増殖が可能であり続ける。だから、さらに地方議会で条例でその旨を議決すれば確実になる(もちろん県産ブランド品種も含めてすべて認めろというのは現実的ではないだろうが、自家増殖可能な品種を確実に提供し続けるという趣旨であれば十分可能ではないか?)。
もちろん、これだけでは他県の品種も国立農研機構の品種も民間品種も通用しないので十分にはならないが、農家の自家増殖権を認める都道府県を増やしていくことで今後の事態を変える基盤になりうるだろう。
そして何より、今、急速に失われつつある地域の伝統的在来種を守る条例を各地で作り、さらに国会でも在来種保全・活用法を作ることで今後の地域の種苗を守ることは可能になるだろう。
もちろん地域の種苗会社にも活躍してもらわなければならない。農家の自家増殖権と種苗会社の育成者権は車の両輪だから。地域の農家の発展と地域の種苗会社の発展は両立可能だろう。
でも、そのためにもこの国会審議に世論が圧力をかけることが不可欠で、問題が知られないまま可決となれば地域での反撃も難しくなる。それだけに多くの方にご関心を持っていただきたい。
参考:
農文協自家増殖禁止に異議あり