種苗法改正案でなぜ意見が割れる?

「種苗法改正問題、人によって言うことが違う」「極端な意見の違いがあって、どう考えていいかわからない」など当惑されている人が少なくないようです。この問題をとてもわかりにくくしているのは作物によって事情が全然違うこと、それから種苗を育てる側の人もあまりに違いがあるからで、それをひもとけば解決策も見えてくると思います。

 たとえば野菜の場合とイチゴやサトウキビ、イモとはまったく事情が異なる。野菜は葉っぱや根っこを食べますので、種子を採る農家も少なく、こうした作物が中心の農家の方にとってはあまり種苗法改定はぴんとこないのだろうと思います。

 一方で、イチゴやサトウキビなどの場合はそうはいかない。地域によって違いがあるかもしれませんが、聞く話しでは農家の多くが自家増殖を前提に栽培のサイクルを組み立てているとのこと。ここで許諾制だの、許諾料の話になったらとんでもない、という話になる。

 そして、種苗を育成する側もまったく異なります。独立して自家採種する農家の方たち、個人ベースの育種家の方たち、地域の小規模種苗企業、国際展開する種苗企業(タキイ、サカタ)、化学企業(三井化学、住友化学など)、海外の多国籍企業、そして国や都道府県の公共種苗事業。あまりにいっしょに語るのは無理なほど規模や形態でも違いがあります。

 これらを1つのルールでやってしまおう、というところに根本的な無理があるのではないかと思わざるをえません。

 種子企業の独占が強まり、世界の作物生産のほとんどがわずかな品種だけで回っているというとっても生物学的にも危険な傾向が強まる中、生態系を守りながら食の安全を確保していくためには地域の多様な種苗をどう将来的にも確保できるか、と問題を立てなければならないと思います。そのためには地域の農家はもちろん、種苗会社も、国や地方自治体の公共種苗事業もその役割を新たに定義していかなければならない時代に入ってきているのだと思います。

 でも法律のロジックは古いまま。育成者権の強化の一本槍。

 地域でがんばっている育種家の人たちがその事業を続けるために種苗法改定を願っている人たちもおられます。でも果たして、育成者権を強めるだけで事業収益があがるようになるのか、疑問です。農家がいなくなれば収益どころではなくなりますので。
 むしろ地域の種苗会社の事業を地域の中で別のロジックで支えていくことを考えた方がより有効で持続可能なんじゃないかと思います。

 韓国でローカルフード育成条例ができています。どんな経緯でできて、どう機能しているのか、まだ十分わかりませんが、その中味はとても魅力があります。こうした新しいパラダイムの種苗のあり方を提案していくことで、地域の育種家の方たち、種苗会社の人たちともいっしょに地域の種苗を豊かにしていく道は切り開けるのではないかと思います。

 種苗法改定だけでなく、2017年に成立した農業競争力強化支援法もある状況で育成者権だけを強化するその行き先にはやはり多国籍企業による知的財産権の独占という道につながってしまうわけで、やはり現在の形での種苗法改定には待ったをかけるべき、と考えざるをえません。

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