公共のお金(税金)が何に使われるべきか、特に公共調達と言われる部門。学校給食がその典型。税金を人びとのために使うのは当たり前であるべきなのだけど、実際に巨大企業に流れるように変えられつつある。水道の民営化がそうであるように。
人びとの目が行き届かないところで、人びとのお金が巨大企業に吸い込まれる。サービスは悪化し、高くなる。これを民主化して、人びとが望む方向に変えようという動きは今、世界各地で、地方自治体中心に大きくなりつつある。
一方で、この公共調達分野、特に学校給食の分野ではかなり前から世界各地で取り組みが始まっている。その端緒はEUが2008年に緑の公共調達(Green Public Procurement)を始めたことだろうか? EU諸国では公共調達での有機化目標を定め、これがその国での農業の有機化を進める上で底上げする力になっている(1)。
有機農産物を慣行農産物よりも、一定の高い金額を保障して買い上げるのが公共調達政策として確立し、さらに直接、技術支援や転換支援をすることで、農家も有機に転換できるようになる。もし市場だけしかなかったら、すべて農家は自分の自己責任でやらなければならなくなる。それではリスクが大きすぎて、多くの農家にとっては実行が困難になる。いかに公共調達政策が大きな役割を果たすか、ということになる。
EU諸国だけでなく、ブラジルでも国レベル、地方自治体レベル両方で進んだ(現在は極右大統領が国レベルでこの動きを破壊しつつあるが)。韓国でも地方自治体レベルで急速に進んでいる。
公共調達政策が効を奏して、市場が拡大し出すと、市場のニーズがさらに有機農業の拡大をプッシュするようになる。ブラジルでは前政権での公共調達政策のおかげで、有機市場が立ち上がり、現政権のひどい政策の中でも有機市場は急成長を続けている。
日本では愛媛県今治市が市の独自の取り組みとして先駆的に進め、千葉県いすみ市や木更津市でも進んでいる。もっとも、これは自治体独自の取り組みであり、その予算的裏付けは各自治体で大変な工夫を重ねることでなんとか実現できている。国がその予算を支援すれば多くの自治体でも実現の可能性が出てくる。
もし2050年に有機を25%にしようというのであれば、まず公共調達(学校給食)を2030年までに少なくとも50%を有機に、という目標を立てるべきだろう。もちろん、今治市やいすみ市など可能な自治体はそれよりはるかに上の目標が設定できるはず。EU諸国がその目標を立てたのは2015年前後で実現すべき年は2020年や2022年である。10年以上遅れているが、それがなければ2050年25%という、それ自身低すぎる目標であっても達成できないだろう。
現在の政権は自助ばかり強いているが、これでは転換は困難。何も変わらない。この傾向が顕著なのは米国と日本政府。そうではない世界の例を見習って、公共調達政策を国レベルで変えていくことが必要だ。今後、全国から政府に向けて、その要求をぶつけていくべきだろう。「みどりの食料システム戦略」は5月に確定という(2)。その前に各地方自治体での意見書を採択したり、市民団体から声をあげていくことが必要だと思う。パブリックコメントを待っていたら遅すぎる。
(1) Organic Public Procurement is a Win-Win Scenario for Farmers, Consumers & Public Goods
https://www.organicwithoutboundaries.bio/2018/09/05/public-procurement/
FRANCE MOVES TO MAKE PUBLIC PROCUREMENT OF FOOD MORE SUSTAINABLE
https://www.foodservicefootprint.com/france-moves-to-make-public-procurement-of-food-more-sustainable/
EU: Sustainable public procurement of food
https://cor.europa.eu/en/engage/studies/Documents/sustainable-public-procurement-food.pdf
(2) みどりの食料システム戦略~食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現~
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kankyo/seisaku/midori/team1.html
公共調達ではないが、市民の学校給食の取り組みとして米国ではConscious Kitchen という動きもある。
https://www.consciouskitchen.org/about/