2050年までに有機農業を25%に拡大する「みどりの食料システム戦略」の中間取りまとめに関するパブリックコメントが本日から開始。なんとわずか2週間後の4月12日が締め切り。
通常のパブコメは一ヶ月間だけど、それより短い。なぜ日本のパブコメはこんなに短いのか、英国の「ゲノム編集」規制緩和に関するパブコメは数ヶ月に及んでいたと思うし、米国でも論争となるパブコメはたいてい期間が延長になって、かなり長期間行われるのが通常だ。日本の場合はその逆で論争の的となるものはむしろ期間を短くして広報もせず、知らぬ間に終わっているという状態にされてしまう。こんなやり方で果たして日本は持つのだろうか? あまりに先進国の姿勢と違いがありすぎる。
さて、今回の「みどりの食料システム戦略」では2つのことをしっかり見たい。1つにはこれまで数値目標を設定されなかった有機農業の拡大に目標が設定されたこと。もう1つは同時にこの戦略が、有機農業とは相容れないバイオテクノロジーや民間企業(多国籍企業)優位なものに換骨奪胎されてしまう可能性があること。
後者は特に危険な動きだが、だからといってこの戦略を無視することはできない。有機農業を拡大させることができなければ日本の食と農はさらに危機的になることは確実であるし、これを拡大させる方向でプッシュすべきだろう。多くの人がコメントを送ってくれることを強く期待したい。
どちらも書き出すと長文になってしまうので、ここでは前者について簡単に書いておく(前編。後編書ける余裕があるかなんとも言えないけれども、後日試みます)。
- 有機農業を成長させるためには各国とも学校給食などのための公共調達政策を重視し、まず国・地方自治体の予算で買い上げている。しかし、この戦略では市場任せで、公共調達について踏み込んでいない。これでは目標達成は無理。しっかりと、予算確保して、買い上げをする必要がある。
- これまでは国も地方自治体も有機に適した種苗の生産体制を整備してこなかった。タネがなければ始まらない。種苗法改正によってさらに有機の種苗を得ることが難しくなろうとしている。この事態に対して、抜本的に有機種苗生産体制、生産支援を打ち出す必要がある。
- 種苗の中でも日本の食文化を支えてきた大豆の種採り農家が存続が危うくなっている。労働環境は厳しく、買い取り価格が低いため、跡継ぎがいない。このままでは日本の大豆はグローバルな大豆に置き換えてしまう。大豆は日本の食文化の中心であるだけでなく、大豆を組み入れた輪作が有機農業の生産にとって要ともなる。この大豆種採り農家の窮状は危機的である。大豆をはじめとする種採り農家の所得保障をいち早く行い、また都道府県の種苗事業の底上げをできるように予算強化する必要がある。
- 現在、米価は暴落し、そして種子法廃止の時には否定していた種子価格の上昇が今年から盛り込まれる地方が出ている。生産費が上がり、売り上げが下がるのであれば農家を続けることすら困難になっているのが現状である。農家の所得保障がまずすぐに必要。そして、農家が有機転換できるように、そのリスクを支える支援政策が不可欠。
- 食の政策はトップダウンだけでは進まない。今、全国で学校給食の有機化を求める大きな声が生まれている。親だけでなく、医療関係者、福祉関係者、教育関係者、農家など領域を超えた人たちが結びついて動き出そうとしている。そうした人たちの力を生かすことで、地域の食を変えていくことが可能になる。市民参加の協議会を各自治体に作り、学校給食のあり方を変えていくことが必要。北米のFood Policy Council、韓国でのローカルフード委員会、ブラジルの食料栄養保障全国協議会(Consea)など世界の経験の中からいいところを取り入れるべき。
- 有機農業はその地にあった方法が作られている。それを生かすことが不可欠。サイバー空間で作った新技術は役立つことはまずないだろう。これまでそうした知見を発展させてきた農家の経験・知識をしっかり受け継ぎ、発展できるように研究調査のあり方を変えていく必要がある。
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「みどりの食料システム戦略」中間取りまとめについての意見・情報の募集について
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=550003303&Mode=0
添付した図は差し替えました。
元あった図は農水省の「「みどりの食料システム戦略」の 検討状況と策定に当たっての考え方」から。
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kankyo/seisaku/midori/team1.html