世界の大きな底流。辻信一さんの言葉で言えば「反生命」から「生命」への流れ。リジェネラティブ・アグリカルチャー(大地再生型農業)の大きな進展を描いた映画。
この映画はそのリジェネラティブ・アグリカルチャーが米国や世界の農業を変え、農業だけでなく、漁業や社会までも変えるさまを描き出している。推薦文を書かせてもらったのだけど、そこで一言、批判めいたことも書いてしまったので、簡単に触れておきたい。
まずはこの映画を見て、今、農業のあり方、社会のあり方を大転換することが今後の世界に必要不可欠であることを実感してほしい、というのがまず第一。その上で、もっと世界は大きな展開をしているし、しかもそれはとっても深いものである。この映画はそこまで描けていないので、もっとさらに追求していく必要があるということ。
米国が変わり始めている。これは本当に驚くべきことで、工業型農業の聖地であった米国が変わり始めている、しかもすごいスピードで拡がり始めている。これこそ気候危機や生物絶滅危機を止める必要不可欠な変革の核心。だからこそ、その重要さを知るためにもこの映画は見る必要がある。
この動きは実はとても深いルーツがある。米国のアレクサンドリア・オカシオ=コルテス(AOC)は米国議会でこの農法のルーツが米国の先住民族にあるかを専門家に質問する。答えはイエス。そして、世界で急速に発展するアグロエコロジー。やはりそのルーツも先住民族の農法の発見にあった。どちらも先住民族の実践に根ざしている。
そして、現在、世界でこうした方法論を使った農業(≒有機農業)が急拡大しているが、その中心はむしろアジア、アフリカ、ラテンアメリカにある。もっともこの映画では米国の白人が世界に教えるような印象になり、しかも先進国中心主義として批判されることの多いNGOが何度も登場する。ここが残念なところではある。だけど、だからといって知らなくていい話ではない。この変化を肌身に感じることがとても重要なものだから。
なぜ、逆に工業型農業が世界を覆ってしまったのか、世界の土壌を破壊し、ハチを初めとする生物を絶滅危機に追いやり、食料危機をもたらしてしまったのか、さらにもっと問い直す必要がある。その推進を米国を初めとした先進国がやっていたことも。
さらに、なぜ、南の地域を中心に対抗運動が強くなってきているのか、そして、ここまで世界大で問題が明らかになっても、南の世界には遺伝子組み換え作物が次から次へと押し付けられようとしている。この矛盾する動きはどう止められるか、そうした問いが続かなければならない。その動きを止められなければ世界の危機は避けられなくなるのだから。でも、それを描いた映画はまだ知らない。だからこそ、まずこの映画を見て、その意義を体感することから始めたい。
世界の大きな変化を日本でも起こしていくために、この映画をまず見てほしい。そして、さらに深くて大きな変化の一部になってほしいと思う。
To Which We Belong
君の根は。
大地再生にいどむ人びと
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