CBD COP15:生物多様性を危機に陥らせる技術の禁止を!

 カナダのモントリオールで開かれている7日から19日まで国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)、大事な会議だけど、日本からの関心はどこまで集まっているか? 生物多様性が失われて、たとえばハチが絶滅すれば、人類は絶滅に瀕するとも言われるし、サンゴが絶滅したら、海は半分くらい死の世界になってしまう。当然、人の生存にも関わる。
 それほど切羽詰まった課題なのに、その肝心の課題に人類は十分取り組めなくなっている。というのも、危機に陥っている生物多様性を守ること以上にそれを破壊する技術を止めることに必死にならなければならないのが実情になっているからだ。今、どんな技術が現れてきているか、確認したい。
 
 その1つが合成生物学。これは究極の遺伝子組み換えとも言われる。これまでの遺伝子組み換えが既存の生物の遺伝子の一部を操作するだけだったのに対して、この合成生物学は文字通り、遺伝子の設計から人間が作ってしまう合成生物。そんなのSFと思うかも知れないけれども、すでに合成生物はできていて、その合成生物から生み出される物質を使ったアイスクリームや化粧品、石鹸などの製品が完成している。米国では従来の遺伝子組み換えでないからとしてNon−GMOとしてアイスクリームが自然食フェアでも売られているというから怖ろしい。
 
 そして問題の焦点の1つとなっているのが、遺伝子ドライブ。たとえばオスの精子を「ゲノム編集」する「ゲノム編集」ツールがそのまま精子に残って、受精後、メス側からの遺伝子まで「ゲノム編集」させてしまう技術。
 突然変異が生まれても、通常は有性生殖によって、その遺伝子を受け継ぐものが出現する確率は世代ごとに2分の1、4分の1と下がっていく。だから種として突然変異から守られるのが有性生殖だと言える。でもこの遺伝子ドライブが使われるとオスかメスかの片方に遺伝子操作をしてしまえば、そこから生まれる子の遺伝子は100%、遺伝子ドライブされたものになっていく。この技術は種すべての遺伝子を変えてしまったり、種全体を絶滅させることができる技術として、そのあまりの危険さゆえ世界的なモラトリアム状態になっている。
 しかし、遺伝子組み換え・「ゲノム編集」推進団体のISAAA(国際アグリバイオ事業団)はここ何度もこの技術の使用推進に向けた国際セミナーを何度にもわたって開いている。この技術がひとたび解禁されてしまえば、世界のどこでどんなバイオハザードが引き起こされるかわからない。合成生物学や遺伝子ドライブのような技術に投資しているのがビル・ゲイツである(1)。
 
 さらにGMウイルス。近年、抗生物質が家畜の餌への投入が増え、家畜から抗生物質耐性菌が生まれることが問題になっている。密集した不衛生な環境に閉じ込めて安い肉を作ろうとするから、どうしても抗生物質に頼ることになり、また抗生物質を入れると太るので、栄養補助剤としても使ってしまうのが常態化しているためだ。
 この耐性菌にはもう薬が効かない菌なので、対応は困難で、人が感染してしまうと深刻な事態になる。そこで登場するのが耐性菌を襲うウイルス。そのウイルスの遺伝子を組み換え、そのウイルスに襲わせることで、耐性菌の繁殖を止めようというわけだ。実際に患者にこうしたウイルスが使われたケースもでている(2)。
 
 確かに医療に限定すれば、そうした時の対処では役に立つかもしれない。だけど、菌だってしたたかなものだ。そのウイルスをやっつけようと変異していくだろう。ウイルスもそれに伴って変わらなければ意味を成さない。そんな中からどんな変異した菌やウイルスが生まれてくるか、怖ろしくなる。そもそもそんな耐性菌が生まれない環境で家畜を健康に育てていれば、そんな危険を犯す場面もなくなる。逆にそうした危険な生産を続けていけばやがて破局的な致死的な菌かウイルスによって大きな被害が出ることは確実だと思われる。
 さらにそうしたウイルスを畑に撒いて畑の上で遺伝子操作をするという構想も存在しているが、それは無制限に生態系に影響を与える可能性が高い。
 
 こうした被害は国境を越えて拡がってしまいかねない。対処する技術を持つ国はいいが、そうした技術を持たない国にそうした被害が拡がり、その技術が使えなかったらどうなるか? だから規制や国際連携が必要になる。
 もっとも新たな遺伝子操作技術である「ゲノム編集」を米国や日本政府は規制する役割をほとんど放棄したも同然になっている。こうした状況ではもはや自然に背いて開発続ける悪の多国籍企業 vs それと闘う世界の市民の対立だけではすまなくなっている。勝手に遺伝子操作しまくるアンダーグラウンドの闇のバイオハッカーが知らぬ間におぞましい遺伝子操作生物を作り上げ、その影響がいつ広がってしまうかすらわからないからだ。被害が拡がってからでは遅いのだ。
 
 それでなくても生物多様性が失われつつある中、このような惨事で世界が苦しめられないように、どんな遺伝子工学規制や規制監視技術を作らなければならないか、真剣な取り組みの議論が必要とされている。その議論は現在の日本政府の政策にも大きな変更を要求せざるをえないだろう。
 
 だからこそ、そうした議論の進展に期待したい(3)。

(1) Bill Gates backs gene technologies in fight to end malaria
https://www.reuters.com/article/health-malaria-gates-idINKBN1HP2QL

Why Bill Gates Is Betting Millions On Synthetic Biology
https://www.forbes.com/sites/oliviergarret/2020/09/10/why-bill-gates-is-betting-millions-on-synthetic-biology/?sh=56e9dabc65c6

(2) World-first human treatment of antibiotic-resistant infection with genetically modified virus
https://newatlas.com/phage-virus-bacteria-treatment-human-patient/59595/

(3) Third World Network: TWN Info Service on Biodiversity and Traditional Knowledge
https://twn.my/title2/biotk/2022/btk220607.htm

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