「ゲノム編集」無規制の世界化が目指すゴールとは?

 「ゲノム編集」食品を無規制に流通させていい、という方針は米国が作り出し、日本が追従したものだが、肝心の米国がずっこけてしまったので、日本の突出振りが目立つ結果となってしまっていたが、ここに来て、世界で急に「ゲノム編集」食品の規制突破の動きが本格化している。安全性が確かめられたからとかではなく、突出している国の好きにさせてはならないとばかりに遅れちゃまずい、という馬鹿な競争がその原因だ。
 
 中国が今年1月に「ゲノム編集」食品の研究を進めるためのルールを発表した(1)。中国は現在、世界でもっとも「ゲノム編集」食品に関する特許を保持しており、中国の動向はとても懸念材料だ。そして、英国政府は新法によって「ゲノム編集」食品推進の立場を明確にしている(2)。さらにEUまでが「ゲノム編集」食品解禁をめざし、7月までパブリック・コンサルテーションを行い、来年夏には市場流通が始まるとみられている(3)。こうした動きにフィリピン政府も追従した(4)。
   
 中でも注目すべきはインド政府の方針かもしれない。日本では遺伝子組み換えではないとして(それはウソだけど)認められている「ゲノム編集」食品はSDN-1と言われる遺伝子を破壊した後、欠損状態になったものに限られる。その破壊したところに外来の塩基(遺伝子の部品)を入れるSDN-2、外来の遺伝子を入れてしまうSDN-3は遺伝子組み換えとして分類している。ところがインド政府はこのSDN−2も遺伝子組み換えではないとして認める方針を出している。結局、この動きを止められなければ明らかな遺伝子組み換えであるSDN-3も遺伝子組み換えではないとして認めていく流れになるだろうし、その一歩がインド政府によって取られたわけだ(5)。
 
 そして、アフリカではさらに危険が指摘される遺伝子ドライブ技術の使用が噂されている(6)。遺伝子ドライブは特定の種の遺伝子をすべて書き換えてしまう「ゲノム編集」技術の応用例だ。生態系を破滅においやるとして禁止を求める声は強いが、推進派は頻繁にセミナーを開いて、実現に動いている。
 
 企業でもっとも「ゲノム編集」食品特許を持っているのはモンサントのタイバル企業である遺伝子組み換え企業であるコルテバであり、モンサントを買収したバイエルはその後塵を拝している。彼らもEUが認めれば一気に「ゲノム編集」食品を市場に投入してくるだろう。承認前に栽培しても、輸出ができなくなってしまうので、それを避けるために止めているのだろう。しかし、今後、続々と出てくる可能性が高い。
  
 この流れで警戒しなければならないのは「ゲノム編集」食品だけではない。従来の遺伝子組み換え食品の規制も同時に無効にさせようという動きが出ているからだ。すでに米国ではトランプ前政権により「ゲノム編集」解禁と同時に従来の遺伝子組み換え食品の規制も大幅に緩和されている。そもそも遺伝子組み換え食品が再び息を吹き返す可能性がある。しかし、その先がさらにある。
 
 それが合成生物学。人間が遺伝子を一から設計して作った合成生物を培養して食にしてしまう。ここで食の工業化は極限に達する。残念なことにこの合成生物はすでにアイスクリームなどでは実現されてしまっており、しかも米国では表示すらされず、Non-GMOとして宣伝されて売られている(7)。こうした合成生物の自由化こそが彼らが目指すゴールだろう。「ゲノム編集」はその入り口に過ぎないかもしれない。

 しかし、米国やドイツなど主要国は民間代替認証や有機認証によって、遺伝子操作されていない食を選択する仕組みをすでに構築している。こうした仕組みがしっかりしていれば、こうした食に社会を乗っ取られることは避けることができる。問題なのは日本である。日本ではこうした仕組みがほとんどないのが現状。有機認証もほとんど広がっていない(わずか0.2%)。この日本の現状たるや深刻そのもの。
 
 そんな状況の中で、どう食を守るのか、1つは地域で守る、グループで守る方法がありうる。地域でタネから安全なものを作り、それに表示を加える、地方自治体が認証をする方法もある。個々の農家の負担だけに頼らない、地域ぐるみ、参加型の認証システムも作れるだろう。OKシードマークといっしょにそうしたマークを使うことで、効果的に拡げていくことができるのではないかと思う(8)。利用は無料。多くの人に使ってもらいたい。

(1) China to allow gene-edited crops in push for food security
https://www.channelnewsasia.com/business/china-allow-gene-edited-crops-push-food-security-2457786

(2) 英国政府が「ゲノム編集」生物緩和法案提出も市場は冷ややか

相次ぐ「ゲノム編集」解禁の動きと対抗策

(3) EU、「ゲノム編集」規制緩和の圧力に屈する?

EU、「ゲノム編集」規制緩和の圧力に屈する?

(4) Philippines: Genome Edited Plant Regulations Published
https://www.fas.usda.gov/data/philippines-genome-edited-plant-regulations-published

(5) 相次ぐ「ゲノム編集」解禁の動きと対抗策

相次ぐ「ゲノム編集」解禁の動きと対抗策

(6) The financialisation of malaria in Africa: Burkina Faso, rogue capital & GM /gene drive mosquitoes
https://www.acbio.org.za/financialisation-malaria-africa-burkina-faso-rogue-capital-gm-gene-drive-mosquitoes

(7) 2021年8月16日の合成生物学で作ったアイスクリームについての投稿
https://www.facebook.com/InyakuTomoya/posts/pfbid02ejJoUF7KjMnaaod7fhuxzeDE2kvGqxHKFRbk7vbndgm1vUT9UGmCNa5jYXNWet7Vl

(8) OKシードマーク
https://okseed.jp/okseedmark/

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