「ゲノム編集」された豚の人への移植:新たな危険

 心臓病で苦しむ患者に「ゲノム編集」された豚の心臓が移植されたが、わずか2ヶ月でその患者は亡くなった。その原因は移植された豚の心臓がウイルスに汚染されていたからのようだ。
 心臓病で苦しむ人たちにとって生きる希望をもたらすはずの臓器移植、しかし移植できる臓器の数は限られており、人間に近い臓器を持つ豚が活用されたわけだが、種の異なる心臓を人間に移植すれば人間の免疫機能はそれを拒絶する。その拒絶反応をさせないために「ゲノム編集」されていた。
 
 この異種間移植には固有の問題がある。この移植手術をする患者は移植臓器への免疫反応が起きないように免疫を抑制せざるをえない。通常人には感染しないはずのウイルスでも、免疫抑制という状況の中で人にも感染する可能性は増大する。この異種間臓器移植が新たな動物経由の感染症、人獣共通感染症を作り出す可能性がある。当然、開発企業も病原体には細心の注意をしていたはずだが、それでも隠れたウイルスを見いだせなかった。
 
 また「ゲノム編集」は安定したDNAの二重鎖を切断し、遺伝子を破壊するが、その破壊への修復を生物は努めようとするものの、破壊されてしまったところに、その周囲を流れていた塩基が入り込む可能性は存在する。その破壊が大規模に起きる可能性も指摘されており、そこにウイルスの塩基が入り込む可能性は否定できず、「ゲノム編集」が新たな危険をもたらすことを指摘する研究者もいる。
 
 もちろん、心臓病で苦しむ人の治癒の道は決して塞がれてはならないが、この異種間臓器移植にはこうした新たな生命の危険を作り出す可能性があることを想定する必要がありそうだ。
 
 この「ゲノム編集」豚を開発した企業リビビコールは、豚アレルギーのセラピーに使う遺伝子組み換え豚GalSafeの開発企業でもある。
 
Biotech firm embroiled in scandal after gene-edited pig heart infected with virus
https://gmwatch.org/en/106-news/latest-news/20025

ブタの心臓移植、世界初の米男性が死亡 術後2カ月
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN09EGO0Z00C22A3000000/

米FDA、遺伝子組み換え豚を承認 アレルギー反応回避へ
https://www.cnn.co.jp/fringe/35163862.html

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA