グアテマラで再び「モンサント法案」世界で進む危険な動き

 「モンサント法案」がかつてラテンアメリカ中を駆け巡った。「モンサント法案」とは農家に数少ない企業の種子を使うことを強制し、在来種の自家採種による農業を実質的に不可能にしてしまう法案を意味する。でも、ラテンアメリカの農民は大きな運動を起こして跳ね返した国も少なくない。たとえばグアテマラは2014年のサッカー・ワールドカップのどさくさに議会が「モンサント法」を承認してしまったが、全国的な抗議行動を受けて、裁判所はその法成立を無効とし、議会も撤回を決めた(1)。
 
 でも、いったん潰した「モンサント法」がグアテマラで再び甦り、議会に提出された(2)。
 
 現在のグアテマラの人口の61%は農業に従事する。その多くが自家消費を基本とする農業である。その多くを多様な在来種が支えている。この種子を奪い、国際商品として売れるグローバルな品種に変えさせる。このことによってグアテマラ農民は自分の食べる作物を作る農民であることから、グローバルな品種を栽培させられる農業労働者に変えられてしまうだろう。グローバルな企業によって、グアテマラの大多数の人びとの生活を根こそぎ変えさせる動きだ。そしてその品種を育てるためには農薬や化学肥料が不可欠になる。
 輸出を増やして外貨を獲得したい勢力にとっては魅力ある政策となり、国内からも推進勢力が生まれてくる。でもこの政策が実現してしまえば、グアテマラ人の栄養状態は悪化し、農薬汚染による健康被害も増加していくだろう。そして何より、グアテマラの農業は海外企業が提供する種子に依存することになる。当然、その多くは遺伝子組み換えとなっていくだろう。グローバル企業はこうして世界の隅までその支配を拡大させようとしている。
 
 このような政策を世界の政府に強いていく国際条約・体制こそがUPOV(ユポフ)だ。その推進でもっとも精力的なのが日本政府となっている。でもこのUPOV体制に組み込まれてから、日本はタネを作れない国に変わってしまっている。まともな政府であれば、その政策を見直して軌道修正を図るのだが、残念なことに、日本政府はこのUPOV体制の強化に突き進んでいる(3)。
 現在もこのUPOV体制は日本で着実に強まりつつある。このUPOV体制の法的仕上げと言えるのが種苗法改正だった。そして同時にアジア諸国にもUPOVへの加盟を強制している。種苗法改正後も国内外での監視体制の強化を進めつつある(4)。自らの首を絞める政策を続けている(5)。
 
 一部の企業(種子開発者)が農業のあり方を決めてしまう。多様性を失い、今後、激化する環境変化に対応できなくなるかもしれない。そして農家はより種子開発者に利益を吸い上げられる。
 
 しかし、一方で世界ではこの動きにはまらない動きも生まれ始めている。在来種を活用した農業の重要性が認知され始めているからだ(6)。
 

参考情報
(1) 2014年8月9日のグアテマラのモンサント法成立に関する投稿
https://www.facebook.com/InyakuTomoya/posts/pfbid02cPwA71pFMDixdSqkHTWZmjNe9Vt9uG1uGhr8KUGLEb69jjcuEmZD2aBC972QPjukl

2014年9月のグアテマラのモンサント法廃案に関する投稿
https://www.facebook.com/photo?fbid=930176310342533&set=a.458373664189469
https://www.facebook.com/photo/?fbid=931853916841439&set=a.458373664189469

(2) El gobierno de Giammattei vuelve a la carga con la Ley Monsanto

El gobierno de Giammattei vuelve a la carga con la Ley Monsanto

Guatemalan small farmers protest against “Monsanto Law”

Guatemalan small farmers protest against “Monsanto Law”

(3) UPOV問題に関する学習会での報告まとめ

UPOV条約で危うくなった日本の種苗

(4) 植物品種等海外流出防止総合対策事業
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/tizai/brand/kentoukai/attach/pdf/5siryou-6.pdf

農業知的財産管理支援機関を国際的に形成するための事前調査。
海外における知的財産管理機関に関する調査報告書
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/tizai/brand/kanri/attach/pdf/kanrikenntou-5.pdf

(5) 秋田県で生産されるお米のほとんどが現在は自家採種できるが、今後、ほぼすべて自家採種できない特許米に代わろうとしている。結果として、これもUPOV体制により適合を高めることになってしまうだろう。
 
(6) 2022年5月13日の投稿。OHM(Organic Heterogeneous Material)、在来種を守る動き
https://www.facebook.com/InyakuTomoya/posts/pfbid0NSFattkRgy4b8SHRSJmNW64zbiywbNmEtgKUNWw2PYWvG8aNYkFoRVU6T1Vft2LPl

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA