ベトナム戦争とモンサント:問われる責任

 フランスでのベトナム戦争のランチハンド作戦(枯れ葉剤作戦)における14企業の責任を問う裁判、フランスの裁判所はなんと棄却(1)。これほど多くの人がTran To Nga(チャン・トー・ガー)さんの訴えに耳を傾け、世界のメディアが注目する中でのこの裁定はがっかり、というところだけれども、当の弁護団は、これだけの大きな問題では裁判所も慎重にならざるをえないでしょう、と理解した上で、控訴するとのことで、要するにこれから始まったというところだろう(2)。 “ベトナム戦争とモンサント:問われる責任” の続きを読む

「ゲノム編集」という言葉が隠す事実

 先日、「ゲノム編集」に関する研究者による国際的なWebinarを見ていて、とても興味深かったのだけど、分子生物学者で遺伝子組み換え工学も手掛けたJonathan Latham氏は「ゲノム編集」という言葉は科学的な名称ではなく、マーケティングの言葉だと述べた(1)。 “「ゲノム編集」という言葉が隠す事実” の続きを読む

ラウンドアップを禁止しなければならない理由

 モンサント(現バイエル)の除草剤ラウンドアップ(主成分グリホサート)は安全とされる濃度であったとしても体内に入ると、腸内微生物叢を撹乱する。人間の免疫の中心である腸、そして第2の脳と言われる腸がこうやって撹乱されてゆく。
 グリホサートは植物がアミノ酸を作るシキミ酸経路をブロックする。アミノ酸を作れなくなれば体が作れなくなる。だから枯れる。モンサントは植物は枯れるけど、動物や人間にはシキミ酸経路がないので、とっても安全、と言い切ってきた。確かに人には植物が持つシキミ酸経路はない。でも人を支える腸内細菌の中にはシキミ酸経路を持つものがいる(進化の順番からは細菌が先にシキミ酸経路を作り、それを植物がもらったのだろう)。だから植物を枯らせるグリホサートは腸内細菌もダメにしてしまう。しかも、いわゆる悪玉菌はグリホサートには耐性の多いものが多い。でも乳酸菌などの善玉菌は耐性がない。グリホサートを摂取することで腸内環境は悪化してしまう。 “ラウンドアップを禁止しなければならない理由” の続きを読む

遺伝子組み換え作物による遺伝子汚染

 遺伝子組み換え作物の商業栽培が始まって25年。その負の影響はもはやさまざまな分野で明らかになっているが、その最大の問題の1つが、遺伝子汚染だと言えるだろう。この問題は「ゲノム編集」ではさらに危険になると言わざるを得ない。この問題を解決しないで、「ゲノム編集」作物の栽培は許されてはならない。
 モンサントなどによって世に出された最初の世代の遺伝子組み換えトウモロコシ、40を超える品種がスクラップになろうとしている。なぜかというと、もはや無用の長物でしかないからだ。虫が食べたら虫が死ぬようなタンパク(Bt毒素)を作り出すように遺伝子組み換えされたトウモロコシが作られているが、このBt毒素に対して虫たちは耐性をつけてしまったのでその品種はもはやまったく意味がない。遺伝資源としても保持する意味がない。
 でも、スクラップにしようとしても、商品棚から外すだけで、話は済まない。というのもその遺伝子は花粉の飛散によって在来種にその遺伝子を移してしまっているからだ。 “遺伝子組み換え作物による遺伝子汚染” の続きを読む

機械翻訳と人による翻訳の違い

 Google翻訳やDeepLなど機械翻訳の精度が急に上がってきた。これまで実用となったのは言語のルーツが近い言語の間の翻訳に限られた。たとえばスペイン語から英語。日本語と韓国語との相性もいい。一方、ヨーロッパ語から日本語へは使えたものじゃなかった。笑いのネタにしかならず、翻訳作業の下準備にも使えなかった。でも、それが急に読める日本語になってきて、ほぼ使えるレベルになった。最近も長いポルトガル語の論文を日本語に翻訳したのだけど、それも機械翻訳で下訳させたものに手を加えた。時々、GoogleもDeepLも意味を取り損ねるケースがあるものの、作業効率は格段に上がった。
 このまま精度が上がれば、もう翻訳という行為は機械翻訳で済んでしまうのだろうか? いや、これは危ない。もし、それに任せれば、とんでもない事態に陥ることもありうると思う。極論すれば支配的価値観によるマイノリティ文化の抹殺、異なる価値観の抹殺、実現できるはずの未来が失われることも起きてしまいかねないのではないか。 “機械翻訳と人による翻訳の違い” の続きを読む