農家の種子の権利を奪うさらなる種苗法改正が議論なしで進んでいく

 日本政府は農家の種子の権利を守ろうという気はまったくないのだろうか?
 種苗法第2条および施行規則を改訂するつもりのようで、そのパブリックコメントが昨日始まった。
 種苗法は農家など使う側の種子の権利を守る法律というよりも、種子企業の知的所有権(つまり種子を売る側)の権利を守る法律で、今回の改訂はUPOV1991年条約とのよりいっそうの整合性を高めるものと読める。
 UPOV1991年条約は自家採種を禁止し、開発企業の知的所有権の遵守することを優先させるもの。
 農作物はたとえば種子から繁殖させずに「栄養繁殖」たとえば株分けとか種イモから増やすような場合にも開発企業にお金を払えということにするのだろう。すでにそうした作物を大事に自家繁殖させていても、毎回、支払え、ということにしたいのだろう。

 結局、その作物はもはや農家のものではなくなり、開発企業の発明物となり、独占所有物になる。そんな変化が着々と進むのだろうか? 締め切りはどちらも12月11日

種苗法施行規則の一部を改正する省令案についての意見・情報の募集について

種苗法第2条第7項の規定に基づく重要な形質を定める件の一部を改正する告示案についての意見・情報の募集について

スペインで種子の知的所有権侵害で農民が牢獄へ。抗議声明

 スペインで農民たちが民間企業の種子を撒いたことに対して知的所有権違反であるとして、牢獄に入れられ、大金の罰金が科された。世界最大の小農民組織であるVia Campesinaはそれに抗議の声を上げる。ヨーロッパでも農民の種子の権利は制限されている。 “スペインで種子の知的所有権侵害で農民が牢獄へ。抗議声明” の続きを読む

アルゼンチンでの「モンサント法案」

 モンサントの種子を勝手に保存したら、モンサント警察に捕まってしまう。裁判に訴えられ破産させられる。いや、アルゼンチンではそうはなっていない。農家はばんばん、モンサントの遺伝子組み換え大豆を保存して、翌年しっかり使っている。ロイヤリティも支払わずに。というのもアルゼンチンではモンサントの遺伝子組み換え大豆の特許はいまだ認められていないのだ。だから、モンサントはロイヤリティを種子を売る時は回収できるが、いったん売ったら、農民たちはそれを保存してしまう。遺伝子組み換え大豆の世界第3位の国なのにその収穫に見合ったロイヤリティをモンサントは回収できない。逮捕しようにも逮捕する法律がない。モンサントは裁判に訴えるも、アルゼンチンの裁判所はモンサントの訴えを退けた。困ったモンサントはその大豆を買う業者に代理徴収をやらせようとした。だけど、そんなの誰もやりたくない。紛争は大きくなるばかり。 “アルゼンチンでの「モンサント法案」” の続きを読む

コスタリカの種子を守る闘い

 「自由貿易協定」の本質が何にあるか、はっきりわかる。その本質とは多国籍企業による生産の「支配」。
 コスタリカの新たな苦悩は2004年5月に調印された「米国・中米・ドミニカ共和国自由貿易協定」に始まる。この自由貿易協定によってコスタリカは2009年UPOV1991年条約加盟国となる。この条約は人びとの種子の権利を損なう。 “コスタリカの種子を守る闘い” の続きを読む

遺伝資源の保護とバイオパイラシー

 今、世界で多くの生物が絶滅に瀕している。野生動植物だけではない。かつて栽培していた品種が消えてしまう。特に先進国ではその消失が激しく、かつて地域毎に異なる品種が農家によって維持されていたものが商業的な種子に代わっていく中で失われていっている。
 生物多様性を確保することの重要性は1992年のリオデジャネイロ環境開発会議でもその後の生物多様性会議でも確認され、それは生物多様性条約に結実し、名古屋議定書も作られたことは記憶に新しい。FAOは食料及び農業のための植物遺伝資源に関する国際条約を2001年に作り、農家が農業生物多様性を守る担い手であることを確認している。 “遺伝資源の保護とバイオパイラシー” の続きを読む