本当の食を守れるか、それとも遺伝子操作された合成食が本当の食を駆逐してしまうのか、今はその分岐点。合成生物学や細胞培養によって作られた合成ミルクが急速に製品化されつつある。でも、その安全性は極めて疑問。合成ミルクから自然界に存在しない物質が検出されている。このままいけば、企業に独占される食によって、私たちは奴隷化されてしまうかもしれない。
フードテックと言われる技術のうち、細胞培養肉はコストや市場の拒否感もあって、スタートアップ企業が相次いで破産状態だが、一方で乳製品の代替の分野では大手が製品化を続けており、合成生物学とともに、今後、生産を急激に拡大する可能性があり、このままでは本当の乳製品を作る畜産業がさらなる打撃を受けてしまう可能性がある。
すでに米国ではパーフェクトデーという企業が合成生物から作ったアイスクリームを販売している。これまでの遺伝子組み換え技術は大豆などの既存の生物の遺伝子を操作するものだが、合成生物学では人間が設計した遺伝子による合成生物を用いる。だから究極の遺伝子組み換えとも言われるのだが、この合成生物が生成するタンパクを使った製品が作られている⁽¹⁾。
すでに大手のネスレがパーフェクトデーと提携し、パーフェクトデイの精密発酵ホエイを使用した乳製品を2022年に販売している⁽²⁾。ネスレに続いて、ユニリーバもパーフェクトデーの作った合成タンパクを使ったチョコレートアイスクリームの発売を発表している⁽³⁾。
この合成生物学を使った乳製品が健康や生態系に与える影響に警鐘を鳴らす研究者もいる。HRI(Health Research Institute)でこの合成生物学で作られたミルクをテストしたところ、自然界に存在しない未知の物質が92も検出されたという⁽⁴⁾。当然ながら人体に与える影響は懸念されるが米国政府は満足な試験もせずに流通を認めており、米国などではすでに販売が始まっている。
しかし、この合成生物学は「精密発酵」というPR用語で宣伝され、アニマルフリーで、気候変動も引き起こさないなどでアピールしており、それを鵜吞みする人は出てくるだろう。特に大手の食品企業が製品を出せば、その広告効果は絶大なものがある。
この合成食が持つ影響は健康や環境だけには留まらない。酪農家は直接の影響を受けるだろう。本当の食を作る人がいなくなれば、私たちはこうした合成食に否が応でも依存せざるをえない。そしてその食は特定の企業の特許によってコントロールされている。私たちはそれらの企業の奴隷になってしまうことになる。
本当の食、リアルな食を作る生産者を守ること、そして合成食を規制させること、急速に大きな課題になっている(細胞培養ミルクについてはまた別の機会に。日本企業も動いているので要注意)。
(1) 合成生物で作られたアイスクリーム
(3) Perfect Day and Unilever Launch New Breyers Lactose-Free Chocolate
https://www.prnewswire.com/news-releases/perfect-day-and-unilever-launch-new-breyers-lactose-free-chocolate-302068999.html
(4) Not so precise fermentation: Lab finds 92 unknown compounds in synthetic biology milk
Not so precise fermentation: Lab finds 92 unknown compounds in synthetic biology milk