汚染土壌回復の試み:下水汚泥肥料を禁止したメイン州の例

 もしあなたが農業を生業にしていて、その農地が汚染されたらどうするだろうか? 当然、汚染した者に責任を取らせようとするだろう。でも相手が強大で責任を取ろうとしなかったら? 取らせたとしても農地はどうなる?
 メイン州にあった空軍基地が閉鎖され、その土地は先住民族に返還された。しかし、PFASの汚染度がひどく、農業にも、人の居住にも適さない状態だった。果たして先住民族はその地をどうしただろうか?
 汚染源は他にもある。米国メイン州は下水汚泥を肥料に使うことを禁止した。下水汚泥肥料の利用は環境保護局もその利用が安全であり、土壌を調整し、栄養を与える下水汚泥肥料の利用は優れた公共政策だと太鼓判を押していた。でも、その後、その汚泥肥料には永遠の化学物質PFASが含まれ、いくつかの農場は閉鎖を余儀なくされた。
 
 でも、そんな状況の中でも、生きた安全な土、安全な環境を取り戻すための試みが行われている。
 
 さまざまな試みが行われているけれども、まずは一番大事なのは影響を受ける人たち、農家の経済支援。これなしには何事も始まらない。そして徹底した調査。水や土壌の検査が行われる。
 その上で、木炭の一種であるバイオ炭を使った除去方法なども試みられている。そして耕作可能なレベルのところではPFASを吸いにくいニンニクなどの作物への転換、そして、土壌からPFASを吸う作物を使った浄化。なんと麻の栽培がいいらしい。麻はPFASを吸い、土壌を回復させる力が強いという。そして収穫された麻はバイオ燃料に変えることが試みられている。
 
 大変な試みだろうし、時間はかかるだろう。でも、こうしていけばその地域の汚染は確実に減っていくだろうし、未来には希望が持てる。
 
 まず汚染源を断ち、汚染から環境が回復できるような施策を行う、とても合理的な方法だ。ただし、そこでの営みは大きく変わる。それまでの営みはできなくなる。でも、そのことによって未来は戻るかもしれない。その変化を受け入れるから未来は開ける。
 
 これに対して、最悪の方法は汚染源を断たない、調査もしない、営みはそのまま。変えようとしない。Business as usualを継続させる。ビジネスを止めないためには何でもする。遺伝子操作して汚染物質を吸わないようにして、それまで通りの生産を継続させる。問題なのは遺伝子操作だけではない。この発想そのものが新たな危機を生んでしまうのだ。根本的な対応方法に間違いがある。でも、日本はこの問題ある方向に進もうとしている。
 
 今、日本は変わることが求められている。変わることで別の未来が開けるはずだ。
 
 
PFAS Shut Maine Farms Down. Now, Some Are Rebounding.

PFAS Shut Maine Farms Down. Now, Some Are Rebounding.

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