本日11日、欧州議会農業委員会とEU加盟国は「ゲノム編集」食品の規制なしの流通を認める案を認めてしまう可能性が高い。この背景にはバイエル(モンサント買収企業)やBASFなどの遺伝子組み換え企業を先頭とするBig Ag(巨大アグリビジネス企業)のロビー活動があり、まさにEUが彼らに買収されていることを示すことになってしまうかもしれない(1)。
Big Agらは新ゲノム技術の安全性をうたうが、それは実証されていない。そしてこの「ゲノム編集」の解禁は何を生み出すだろうか? 数え切れないほどの問題が懸念されるが、最近、とりわけ焦点となっているのが次の2点だ。
・ 農薬のさらなる増加(除草剤耐性「ゲノム編集」作物)
・ 気候変動対策品種の開発が困難に
「ゲノム編集」食品と言えば、ギャバ成分が多いとか、肉厚とか、生産性を上げるそんなことが強調される(実際に生産性が上がることには大いに懐疑的だが)。農薬の使用が増えるというのは従来の遺伝子組み換え作物で「ゲノム編集」では違うのでは、と思うかもしれないが、「ゲノム編集」特許を持つ遺伝子組み換え企業、コルテバもバイエルも農薬企業であることを忘れてはいけない。彼らは農薬が売りたいのだ。そして、実際に「ゲノム編集」による農薬耐性作物が準備されている。
欧州委員会は除草剤耐性の「ゲノム編集」作物は完全規制緩和のカテゴリーには入れないと当初述べていた。そのような作物を栽培すれば農薬使用が増え、環境にも健康にも大きな問題を生みうるからだ。しかし、Big Agロビーはその措置に圧力をかけ、撤廃させ、除草剤耐性の「ゲノム編集」作物が完全規制緩和されるという案に変わってしまったことが情報公開によって明らかになった(2)。
並行して、Big AgロビーはEUのFarm to Fork戦略の農薬削減法(SUR)を骨抜きにしてしまい、農薬削減政策は放棄され、彼らの戦略は両輪が揃った。つまり、農薬の規制をやめさせ、農薬をもっと必要とする「ゲノム編集」作物を規制せずに売れる政策が準備されることに至ったということになる。
今、気候危機が激しくなり、全力をこの気候危機対策に向けなければならない時に、気候危機対策どころか気候危機を加速させる農薬使用を増加させる作物を流通させるために力が割かれる。そしてそうした品種が増えることで、気候危機に耐えられる品種は開発がさらに困難になる。
なぜならば「ゲノム編集」作物は特許によってごくわずかな企業によって独占されることになり、気候危機に対応するための新たな品種改良がこの特許によって制約されてしまうからだ。通常育種の品種であれば新品種に使うことができる。でも特許を取られた作物はそのようなことができず、交渉によって開発権を得て、莫大なライセンス料支払いをしなければ使うことはできなくなるのだ。
危機を加速するだけの政策、それは市民が求めているものとは真逆のものなのだが、巨大企業のロビー活動を自由にすれば、政策はそうなってしまう。政府や国際機関が、巨大企業の利益を守り、危機に立ち向かうばかりか危機を加速することに。
(1) Bayer, BASF lobby pushed to scrap safety rules on new GM crops – even if they increase pesticide use
https://corporateeurope.org/en/2023/12/bayer-basf-lobby-pushed-scrap-safety-rules-new-gm-crops-even-if-they-increase-pesticide-use
New GMOs: What citizens, farmers, food operators and nature can expect from EU agriculture ministers
https://gmwatch.org/en/106-news/latest-news/20342
(2) Bayer, BASF lobby pushed to scrap safety rules on new GM crops – even if they increase pesticide use
https://corporateeurope.org/sites/default/files/2023-12/Bayer%2C%20BASF%20lobby%20pushed%20to%20scrap%20safety%20rules%20on%20new%20GM%20crops%20%E2%80%93%20even%20if%20they%20increase%20pesticide%20use.pdf