日本で市販されるバナナの大部分の生産が集中しているフィリピン・ミンダナオ島で遺伝子組み換えバナナの試験栽培が始められてしまうかもしれない。11月にミンダナオ現地のテレビ局でオーストラリアの研究者がその意向を表明したという。この報道に対して、危機感を募らせたのは現地のバナナ生産者・輸出者協会。現地のバナナ生産に大きな影響を与えかねないとして、そうした試験栽培の報道の前に、現地のステークホルダーとの協議が必要だと語った。
遺伝子組み換えバナナが出てくる背景は現在、世界で売られているキャベンディッシュという品種のバナナが新パナマ病とよばれる治癒が不可能なフザリウム菌による菌病が蔓延し、絶滅の可能性が語られているからだ。その菌病に耐性を持った遺伝子組み換えバナナがオーストラリアで開発され、後は試験栽培が済めば、商業栽培の段取りとなる。
そもそもなぜ新パナマ病の脅威、つまり現在の品種の絶滅が危惧されているのか? バナナは種子からではなく、株分けから増やしていくため、遺伝子的に同一のものとなる。特定の病気があっという間に絶滅の危機をもたらすものとなる。しかも、それが世界的に大規模プランテーションで生産されている。そうなれば害虫などの被害にも遭いやすく、農薬の使用が増える。土壌でバナナを菌病から守ってきた土壌細菌はそうした農薬によって影響を受け、損なわれる。殺菌剤がさらに多く使われるようになる。こうしてより菌病にさらされやすい環境でバナナが生産される限り、1つの菌病に対応したとしても、すぐにまた新たな菌病が生まれ、遺伝子組み換えとのいたちごっこになってしまうだろう。
バナナを守るものは遺伝子組み換えではなく、土壌細菌を守る農法であり、生物多様性によって虫害からの被害をコントロールする農法であり、それを実践しているのはプランテーション型生産ではなく、家族農業による伝統的なバナナ生産だ。現在も世界で多くの品種の地バナナを育てているのはそうした家族農家である。そのほとんどはローカルな市場で食べられている。
ミンダナオの人が言っていたが、国際市場にでるキャベンディッシュを現地の人は食べる人などいない。彼らにとっては、まずいし、体を冷やすだからだそうだ。料理用などにとても多品種な地バナナが作られている。プランテーションで作られるキャベンディッシュバナナは現地では豚しか食べないという。それを先進国の消費者は食べている。もう、多国籍企業が作るプランテーション・バナナであるキャベンディッシュバナナを食べることは考え直した方がいいのかもしれない。
Banana growers oppose GM field-testing in Mindanao http://bworldonline.com/banana-growers-oppose-gm-field-testing-mindanao/