アフリカが現在、多国籍企業による農民の種子の権利を奪い、遺伝子組み換え農業が強制される最前線となってしまっていることをたびたび書いてきた。今、ウガンダが南アフリカに次ぐ遺伝子組み換え食品栽培国となる可能性が高くなってきた。遺伝子組み換え法案と呼ばれるバイオテクノロジーとバイオセーフティ法案がすでに今年の10月4日に議会を通過し、大統領の署名を待つだけになっている。大統領は法案の早期の成立を催促していた経緯から署名は確実とみられる。
ウガンダではトウモロコシ、バナナ、キャッサバ、じゃがいも、コメ、大豆やスイートポテトなどの遺伝子組み換え作物の栽培国となってしまう可能性がとても高い。特に遺伝子組み換えバナナはすぐにでも登場しかねない。
遺伝子組み換えバナナには菌病や線虫やゾウムシ耐性のものや、ビタミンA、亜鉛、鉄分などの栄養素を強化した品種が開発されている。しかし、それらは一体何のためなのか? ビタミンAならばわざわざ高ビタミンAのバナナでなくても、ビタミンAをたっぷり含むウガンダの伝統的な人参を食べればいい。菌病などは前に書いたように土壌細菌を大事にする農業をやる方がはるかに長期的な効果は得られる。あの手この手を使って、農家の力を削ぎ、多国籍企業に依存しなければ農業をできなくさせる、そうしたマスター計画にウガンダ政府は乗ってしまっていることになる。
ウガンダでは1000年もの間、人びとの主食となってきた50もの地バナナの品種がある。そうした品種を守り、アグロエコロジーの実践により、遺伝子組み換えバナナの侵略に抵抗しようとSlow Food Ugandaは呼びかけている。
遺伝子組み換えは2015年、生産面積が前年比、落ち込んだ。翌年には28カ国あった生産国が2カ国減り、26カ国となった。遺伝子組み換え農業は明らかに壁にぶち当たっている。しかし、北への拡大に陰りが出た遺伝子組み換えは南への拡大を始めている。
北で拒絶された技術が南に向かう。遺伝子組み換えもまたその例の1つになるのだろう。南に向かう遺伝子組み換えに注目しておかないと、北で窮地に陥った遺伝子組み換えはそうやって息を吹き返すだろう。それに対抗しようとしているウガンダの家族農家のアグロエコロジーの進展にもぜひ注目したい。
https://stopgetrees.org/gmo-bananas-not-answer-ugandas-biodiversity-solution-countrys-food-problems
追記:
ウガンダのヨウェリ・ムセベニ大統領は議会が承認した遺伝子組み換え農業を可能にするバイオテクノロジーとバイオセーフティ法の承認を拒否して、議会に再検討を求めた。承認拒否の理由はかなりしっかりしていて、
・ ウガンダにはウガンダ固有の遺伝子資源がある
・ 遺伝子組み換えの導入によって特定の形質を入れただけで、コミュニティが長く発展させてきた品種の独占につながってしまう怖れがある
・ 問題がわかってからでは遅いので、ウガンダの固有の種子に遺伝子組み換え作物の種子が交配させてはならない
・ 作物や動物への遺伝子組み換えが人間に作用を与えないような境界を確保ができるのか、検証する必要がある
というもの。もっとも議会側は大統領の拒否をまだ正式に受領しておらず、また受領したとしても再び、承認を求めてくる可能性は高そうだ。
Museveni declines to sign GMO bill into law https://www.businessdailyafrica.com/news/ea/uganda/Museveni-declines-to-sign-GMO-bill-into-law/4003148-4244100-v66gbrz/