トランプ米国大統領はゲノム編集の解禁に続き、従来の遺伝子組み換えの規制も撤廃するための大統領令に署名した。米国での遺伝子組み換えの規制は規制という名前に値しないものだが、それすらなくしてしまえば、いったいどうなってしまうのだろうか? 世界に与える破壊的な影響は大きい。
米国内だけで制度を変えるというだけではない。120日以内に世界各国の遺伝子組み換えの貿易障壁を取り払う戦略を策定するとしている(1)。この記事ではEUや英国市場と書かれているが、大統領令にはそんな限定は書かれていない。日本の規制のあり方もさらに変えられていくかもしれない。ゲノム編集のあまりに拙速な解禁も、日本での遺伝子組み換え食品表示を実質的にできなくするという措置なども米国の圧力が背後であるだろう。もっとも日本の障壁はすでにほとんど破壊されてしまっていると言えるかもしれない。現実的な米国にとって大きな障壁はやはりEU(英国)や中国だろう。でも日本と違って、トランプの思惑通りに行くことはたぶんない。
しかし、こうしたトランプの強気を支えているのが英国でのボリス・ジョンソンの首相就任だろう。ジョンソンも英国のEU離脱と同時に遺伝子組み換え・バイオテクノロジー産業の推進を声高に唱えている。トランプとそれに追従するジョンソン、安倍(さらにはフィリピンのドゥテルテやブラジルのボルソナロも追加しておくべきかもしれない)というまったく常軌を逸した権力者たちによって、世界はより危険にされようとしている。
対抗できるのはローカル/グローバルな市民の連帯。
もっとも世界では遺伝子組み換えはかつての勢いはなく、勢いがあるのは有機農業・有機食品。米国でも英国でも有機市場は急速に拡大している。トランプやジョンソンの政策はその現実に真っ向から逆らうもの。その矛盾は日本に押しつけられる可能性が大だと思うが、日本に押しつけられている米国モデルから自由になるチャンスもこの世界の対立の中に存在するかもしれない。
(1) Trump aims to force open UK/EU markets to GMOs – within 120 days