キーストーン遺伝子の発見:失えば生物絶滅も(「ゲノム編集」規制が不可欠なもう1つの理由)

 キーストーンという言葉がある。文脈によって印象が変わってしまうけど、ここでは生態系を支える要石という意味で考えてほしい。たとえばよく知られるのは海におけるサンゴ。サンゴは海洋生物の4分の1を直接支え、間接的に支えるものを入れれば4割を支えるという。そのサンゴは海の中の0.1%にしか存在しない。サンゴが失われれば多くの海の生物が死滅する。サンゴは海の生物を支えるキーストーンだ。
 遺伝子の中でもキーストーンと呼ぶべきものがあることが研究によって判明した(1)。その遺伝子がなくなると、周辺の生物の絶滅という事態を生んでしまうというのだ。つまり、その遺伝子は周辺の生態にとってキーストーンになっていることになる。
 
 どういうことかというと、ある栄養素、たとえばグルコシノレート(辛味をもつアブラナ科の植物に多くに含まれる物質)の生成に関係する特定の遺伝子がなくなると、その生成が激減する。その結果、植物に群がるアブラムシやそのアブラムシを襲う寄生バチなどの益虫が絶滅してしまうというのだ(2)。そうした昆虫類の絶滅の影響はそれを食べる鳥、動物の数の減少にも広がっていかざるをえない。だからこそ、キーストーン遺伝子となる遺伝子をはじめとした遺伝子の多様性が保たれることが重要ということになる。
 
 この発見は「ゲノム編集」は従来の遺伝子組み換え技術以上に生態系に危険を与える可能性がありうることを示していると言えるだろう。もし、辛みの少ない作物を作ろうとして、多くの生物を絶滅に追い込んでしまうことが起こりうる。その連鎖によって大きな生態系の崩壊に繋がる危険すらある。
 
 「ゲノム編集と同様の変異は自然界でも起きる」というが、このようなキーストーンとなる遺伝子が自然の中ですべて突然消滅することはまず起きない。一部でそのような変化が起きても、有性生殖の中で、それが種全体の遺伝子を変えてしまう事態はまず起きない。益虫を滅ぼしてしまう植生は優勢にはなりえないからだ。しかし、自然界では生き残れないものであっても人間の手が加われば大量栽培ができてしまう。結果的に自然界では起きえない生態系へのダメージが生み出される可能性がある。
 
 このような変化は従来の遺伝子組み換えでも起きる可能性は否定できない。挿入遺伝子によって全体の遺伝発現のバランスが壊れることも想定しうる。しかし、「ゲノム編集」は遺伝子破壊によってさらにこの危険を現実化する技術であるといわざるをえないだろう。
 
 このようなキーストーンの遺伝子の発見の意味は大きい。このような役割を果たす遺伝子の機能を人類はまだほとんど知っていない。それなのに、遺伝子を破壊する技術を進めてしまうことがいかに愚かなことか。
 
 キーストーンの遺伝子を守るためにも、「ゲノム編集」などの遺伝子操作は厳格な規制の下に置く必要がある。
 
 推進派は積極的にデタラメな情報を流し続けている。たとえば「ゲノム編集は特定の遺伝子のみスイッチをオン/オフにできる技術だ」など。こう言われると「オフにするのがまずかったらまたオンに戻せばいいじゃないか、反対するなんて技術の発展を止めてしまう」と思ってしまうかもしれない。しかし、実際に行われるのは遺伝子の破壊であって、破壊された遺伝子をオンにすることはできない。
 
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『ゲノム編集ー神話と現実:煙幕の中のガイドブック』
https://okseed.jp/genomemyths.html?keystone

(1) A keystone gene underlies the persistence of an experimental food web
https://www.science.org/doi/10.1126/science.abf2232

(2) Changes in single genes may threaten whole ecosystems
https://www.testbiotech.org/en/news/changes-single-genes-may-threaten-whole-ecosystems

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