コカコーラ社のジュースからPFAS検出で集団訴訟が起きたことを書いたけれども、米国ではこれ以外にさまざまなPFAS汚染に関する訴訟が起こされている。
この記事(1)に挙げられているのは、化粧品企業の6社、食品包装企業の6社、女性用衛生用品企業3社。
この訴訟の中でも化粧品と女性用衛生用品(生理用下着)や尿漏れ防止パッドは人体に直接触れるものだけに懸念も大きい。以前、アルゼンチンでタンポンからグリホサートが検出されたことが大きな関心を集めた(2)。コットンの多くが遺伝子組み換えコットンから作られており、その栽培にグリホサートが使われていることがその原因と考えられているが、このPFASがなぜ下着などから検出されるのか、汚れを取りやすくするために入れられている可能性が指摘されている。タンポンなどの生理用品からもPFASが検出されたものが多数ある(3)。タンポンの場合は経口と匹敵する被害につながることが想定されるので大問題である。果たして日本の製品はどうか?
米国政府はすでに規制に向けて動き出した。バイデン政権は2023会計年度のEPA 予算要求を含め、PFASへの取り組みを優先事項にした。2021年12月に持続可能な公共調達に関する行政命令を発行し、連邦政府機関に対し、PFASを添加せずに製造された品目の調達を優先するよう促している。市民団体はさらなる規制を求めて、議会に働きかけている(4)。
このような流れになったのも市民の告発→メディアが報道→消費者が懸念→検査の結果、汚染の判明→集団訴訟という動きがあったからだろう。こうした動きが政府の取り組みにつながる。しかし、日本政府の動きは鈍い。こうしたことを取り上げると、それは米国の指図なのだということを言う人が出て、心折られる気持ちになる。
なんでも小難しい問題は全部、米国のせいにして思考停止にする人があまりに多いと思う。なんでも米国が悪い、と言えば気が済むのだろうか。米国で規制の動きが起きたのはそれを告発した市民やメディアがあって、市民が訴訟にも立ち上がった。だから米国政府も対応せざるをえなかったのだ。なぜ、日本でそれが起きないか、と言えば、何があっても「米国のせい」で考えることを止めてしまう思考停止の人が多いからだろう。これではいつまでたっても日本は粗悪品の処分場にしかならない。
米軍基地からの高濃度のPFAS汚染水問題を中心に、下水汚泥−肥料利用問題、生理用品などへのPFAS汚染問題など、PFAS問題を通常国会で追及していくべきだ。使われている日常用品の中でのPFAS検査も必須だろう。これは米国政府の問題ではなく、日本社会自身の問題なのだから。
(1) Coca-Cola PFAS Consumer Fraud Lawsuit Continues 2022 Trend
https://www.cmbg3.com/coca-cola-pfas-consumer-fraud-lawsuit-continues-2022-trend
(2) 2015年12月30日の投稿
https://www.facebook.com/photo?fbid=1222623864431108&set=a.458373664189469
(3) Evidence of PFAS found in tampons — including organic brands
https://www.ehn.org/pfas-tampons-2658510849/pfas-in-feminine-care-products
Evidence of PFAS in sanitary and incontinence pads
https://www.ehn.org/pfas-sanitary-pads-2658810347.html
(4) New lawsuit contends period products contain ‘forever chemicals’
https://www.ewg.org/news-insights/news/2022/04/new-lawsuit-contends-period-products-contain-forever-chemicals