食料・農業・農村基本法見直しについて

 食料・農業・農村基本法改正に向けた農水省との意見交換会が3月29日に開かれた。農業消滅や食料危機が現実性を帯びている今、日本での食のあり方を大きく変えることは不可欠のことだろう。では、農水省の見直しの内容はどう評価できるだろうか?
 
 残念ながら、根本的に見直しの内容を見直さなければ現在の危機的な流れを変えることはできないと言わざるを得ない。 “食料・農業・農村基本法見直しについて” の続きを読む

コオロギ食・工業的昆虫食推進にノー

 コオロギ食をめぐってSNSが騒がしい。イナゴなどの伝統的昆虫食と違う問題がそこにある。岸田首相が予算委員会で推進宣言したフードテックだが、その推進ビジョンのロードマップによるとすでに昨年にコオロギの生産ガイドラインは完成していて、今後、他の昆虫のガイドラインが作られていくことになっている。
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フードテック推進ビジョンに圧倒的な反対の声

 年末年始にかけて行われたフードテック推進ビジョンに関するパブリックコメントの結果が公表された。フードテックというのは曖昧な言葉だが、その中身は細胞培養肉などの細胞性食品、「ゲノム編集」技術、昆虫食、代替肉、さらには食品管理技術などが含まれる。
 しかし、そもそも「ゲノム編集」技術を使った食品は国会での議論もなく、省庁内の検討会だけでゴーサインになってしまった。そして、細胞性食品も、そこにどんな技術が使われ、どんな問題が起きるか、十分な検討はなされていない。
 にも関わらず、農水省が推進を決めたことには強い違和感を感じる。そして、実際、寄せられたコメントのほとんどは推進反対で埋め尽くされた。
 ところが農水省はこのパブコメをこの言葉で締めくくる。
「御意見をお寄せいただきました皆様方に深く御礼申し上げるとともに、今後ともフードテックの推進に御協力いただきますよう、よろしくお願い申し上げます」
 
 推進するな、という圧倒的な声に対して、まったく馬耳東風そのもの。ほとんどパブリックコメントをやる意義を理解していないとしかいいようがない。 “フードテック推進ビジョンに圧倒的な反対の声” の続きを読む

細胞農業、工業的昆虫食、代替タンパク産業は不要

 国会で細胞培養肉などの細胞性食品・フードテックに関する質疑が22日に行われ、岸田首相は「世界の食料問題の解決に貢献する取り組みを後押ししていかなければならない」と語った(1)。
 
 世界の食料問題というけれども、何が問題なのかをすり替えればさらなる問題が作られる。世界は代替タンパク(プロテイン)でもちきりだ。いわく、細胞培養肉、代替肉、さらには昆虫食、遺伝子操作した魚の養殖…。
 
 なんでこんな騒ぎになっているのか?
 背景にあるのはこれまでのタンパク質ビジネスの頂点にあったファクトリーファーミング(工業的集約型大規模畜産)が限界に達して収益や今後の成長が見込めなくなった、ということ。気候変動効果ガスを大量に産出し、水や空気も汚染し、薬が効かない耐性菌の発生源となるファクトリーファーミングに世界は厳しい目を向けだした。そして、環境的にももはやそのような生産を拡大させることには限界が見えてきた。 “細胞農業、工業的昆虫食、代替タンパク産業は不要” の続きを読む

フードテック推進ビジョンの行き着き先:工業型食のディストピアにノーを!

 フードテック推進ビジョンのパブコメ、締め切り時間(本日23時59分)が近づく。
食のことなんか関心ないよ、という人に一言。これは何より民主主義の問題だということ。本来、国が果たす役割を放棄し、そのツケはすべて市民に来ることになる。 “フードテック推進ビジョンの行き着き先:工業型食のディストピアにノーを!” の続きを読む

フードテック推進ビジョンを批判する:越権行為

 1月9日締め切りのフードテック推進ビジョンに関するパブリックコメント、重要なので別の角度から見てみたい。
 
 戦後日本の原則でもあった戦争をしないという国是、そして原発は新設しないという政策が国会での議論もなく、勝手に閣議決定されたのと同様に、いやそれ以上にまったく国会では何の検討もないまま、推進されようとしているのがフードテック。
 
 何が問題か、考えてほしい。
 
 「細胞培養肉はすごい、動物から幹細胞をちょっと持ってくるだけで殺さずに肉が増やせる。しかも気候変動ガスになる牛のゲップも出ないから気候危機対策にもなる」などといいことばかり宣伝文句を並べるけれども、細胞培養が人間社会を根底から覆すくらい、大きな影響を与えかねないことについては語ろうとしない。 “フードテック推進ビジョンを批判する:越権行為” の続きを読む

フードテック推進ビジョンを批判する:「ゲノム編集」・細胞培養食に未来はない

 完全に見逃していた。「ゲノム編集」や細胞培養肉などのフードテックを推進する政策に関するパブリックコメント。締切がなんと1月9日(今度の月曜日)。一言で冗談じゃない、という内容なのだけど、期間の限られた時間の中でなんとか一人でも多くの人がコメントを寄せていただきたい。問題点について書き出すと切りが無いのだが、まずは基本的な考え方についてまとめてみたい。 “フードテック推進ビジョンを批判する:「ゲノム編集」・細胞培養食に未来はない” の続きを読む

食は権利、すべての人に健康にいい食を! ブラジルのホームレス運動から

 もう過ぎてしまったけれども、ブラジルでは1993年の反飢餓キャンペーンがブラジル全土を巻き込む巨大な運動になって以来、毎年、クリスマスになると、餓えのないクリスマスというキャンペーンが取り組まれる。
 カトリックが多いブラジルではクリスマスにはほとんどの店が閉まる。この日は家族と共に暮らす日なのだ。いっしょに過ごす家族を失ってしまった人にとってはつらさが募る日でもあり、自殺者も多くなると聞く。
 新型コロナウイルスはブラジルで70万人の命を奪う猛威を振るっているが、その脅威は失業と食料高騰によって、特に貧困層を直撃している。ブラジルは米国と世界一を争う農産物輸出国だが、肝心の主食である小麦は輸入に頼り、お米も輸入が増えている。新型コロナウイルス蔓延以降、輸入価格は高騰し、貧困層を直撃している。労働者党政権の後のボルソナロ政権では巨大地主を優遇する政策に転じ、小農からの食料買い上げや学校給食への予算もカットし、労働者党政権下で激減していた飢餓層がこの4年間で急速に拡大してきた。労働者党政権の下でほぼ根絶しかけた飢餓人口は2000万人近くに膨れあがっているという指摘もある。
 
 こんなピンチでもチャンスに変えるのがブラジルの民衆運動と感心するのだけど、ブラジルのホームレス労働者運動(MTST)はCozinha Solidária(連帯キッチン)という取り組みを2年前に始めた(1)。現在、ブラジル各地に作られ、現在31箇所。人びとの寄付を原資に無償の食事が貧困地域の人びとに提供されている。すでに累計100万食が提供されたという。オンライン寄付で毎月15レアル(400円弱)などの少額寄付を募っている(2)。 “食は権利、すべての人に健康にいい食を! ブラジルのホームレス運動から” の続きを読む