未来の種子のシステムはどんなもの?

 未来を先取りしたいと思わないだろうか? 気候変動の激化や生物大量絶滅が危惧されている中で、それへの解決策が示せれば世界に大変な貢献ができることになる。そんなわくわくするような試みがあちこちで行われているものの、それをすべて潰してしまうようなおかしな政治がわたしたちの前に立ちはだかる。それは産業の発展も阻害する。 “未来の種子のシステムはどんなもの?” の続きを読む

種苗法改正で本当に問われるべきだったこと

 改正種苗法について、立ち位置によってさまざまな意見があると思いますが、以下のことを念頭に入れていただければ大変幸いです。

 これまでの種苗法は新品種を育成した育成者とその種苗を使う側の農家の両方の権利を守らなければならないというものでした。新品種を作ることができなくなれば農業にも影響を与えてしまいますから育成者の方たちが事業をやっていけることはもちろん、重要です。そしてそれを買う側の農家がいなくなれば、売り先がなくなってしまいます。だから両方をバランス良く支えることが不可欠になるけれども、今回の法改正はそのバランスを壊してしまうことに懸念があります。

 でも、それは問題の1つに過ぎません。今後、地域で必要とされる種苗をどう確保していくか、という問題があります。各道府県で活用される種苗を調べていけばすぐわかりますが、国や地方自治体が開発した公的品種が大きな割合を占めています。これを民営化することが今回の種苗法の隠れた目的でしょう。 “種苗法改正で本当に問われるべきだったこと” の続きを読む

改正種苗法はこれだけ問題

もう国会で決まっちゃったんだからもうこだわっても仕方ない? いや施行までにはまだ時間がある。おかしなままでは大変な混乱が生まれてしまいかねない。そのような点は実態に即して是正を求めなければならない。種苗法改正のことだ。
 審議の際に説明されたことが果たして妥当だったか? 実際にどうであったか、東京大学大学院農学生命科学研究科鈴木宣弘研究室、参議院議員川田龍平事務所の協力の下に、実際に種苗法の下に生産を行う農業者を対象にアンケート調査を行った(対象地域は北海道、青森県、山形県、愛知県、福岡県、熊本県)。そこで分かってきたことは…。  “改正種苗法はこれだけ問題” の続きを読む

南の国での種苗委託栽培労働の実態:インド、ネパール

 日本の野菜の種子は9割は海外産という。日本の種子企業が海外で生産しているということなのだが、その生産の実態はどうなっているだろうか? 今、種苗の開発は本国で行うけれども、それを増殖させるのは南の国々で行うというのは他の国でも行われているようだ。特にオランダにはそうした企業が集まる。北で開発された種苗を南で増殖する、その南の国々、インド、ネパールでの種苗増産に取り組む労働者の状況に関するWebinarが開催された。その実態は大いに憂慮すべきものであることがわかった。 “南の国での種苗委託栽培労働の実態:インド、ネパール” の続きを読む

改正種苗法施行の前に

 改正種苗法施行前に考えてみたい。今後の食がどう変えられようとしているか? まずハイテク企業の動きを注目する必要がある。ビル・ゲイツは「ゲノム編集」を含む遺伝子組み換え技術に莫大な投資を行い、種苗をOSになぞらえて、マイクロソフトがOS独占で巨大企業に成長したように、食を次のターゲットとしようとしている。モンサント(現バイエル)はビッグデータ企業を買収し、アマゾンが生鮮品まで手をかけ、富士通までもが海外で農業投資を本格化している。キーワードは技術による食のシステムの統合(=囲い込み)。巨大企業が食を種苗から流通まで把握しようとしている(1)。 “改正種苗法施行の前に” の続きを読む

生態系の危機と食・種子を守ること

 新型コロナウイルスは食のシステムを変えるきっかけになるという話が海外からボンボンと飛び込んでくる。
 農場で働く移民労働者が国境を越せずにスーパーに生鮮食料品が不足、家庭菜園をやってみようという市民が急増。でも、タネがない。英国では需要は600%増えたものもあるという(1)。タネもよその国の農場でまとめて作って輸入するのではこんな時は止まってしまう危険がある。野菜の種子を9割海外に依存する日本は脆弱すぎるほどだが危機感のほどはどうだろう?
 結局、グローバルな食のシステムが止まったら何が起きるか、世界の多くの人たちが知ったということだ。タネからローカルに育て、そのタネを共有することがわたしたちの生存に欠かせない。 “生態系の危機と食・種子を守ること” の続きを読む

衆議院農林水産委員会での参考人陳述(種苗法改正)

 11月12日、衆議院農林水産委員会で行われた種苗法改正案の審議で参考人質疑で陳述を行いました。
 政府は批判に正面からたち向かい合うことなく、逃げてしまったので、ここで提起した問題は残ったままであると思います。
 
 だから今さらながら、プレゼン資料とセットでビデオにしてみました。傍聴する人、インターネット中継で見る人には資料なしで伝わらなかったものもこのビデオであればわかってもらえると思います(16分30秒)。

 なぜ国会では旧態依然の紙の資料で済ませているのか不可解です。うまく議員にも伝わらないし、時間も無駄になる。
 ちなみにこの陳述は農民の権利とかを中心に押していく以上に保守の人たちにとっても、これはこのままでは問題ですよ、と見せることに重きを置きました。そのために少し違和感を感じられるところがあるかもしれません。

 この日の原稿を元にまとめたブログ記事(時間の関係でこのビデオの中では原稿通り読めていませんが)
衆議院農林水産委員会種苗法改正法案参考人陳述

 また、その日にまとめたブログ記事「審議で明らかになった種苗法改正案の10の問題」もご覧ください。

審議で明らかになった種苗法改正案の10の問題

農水省の「ゲノム編集」シンポジウム

 本日行われた農水省の「ゲノム編集技術を用いた農林水産物を考えるシンポジウム」、予想通り推進側だけの一方的内容、今、世界で「ゲノム編集」にぶつけられている問題には一切触れず、これまでの繰り返しの古い説のオンパレードで新しい発見はなし。批判も封じて、消費者とコミュニケーションと言われてもなぁ。

 大きな問題だと思ったのは「ゲノム編集」による想定外の変異について、オフターゲット変異だけに絞っていたこと。オフターゲットについては現在、遺伝子操作方法の改善もあり、発生の低減も見られているけど、一方で、オンターゲット(狙い通り)の遺伝子破壊ができた場合でも想定以外の変異が起きていること、そして遺伝子の大量欠損とそれに伴う変異が起きるケース、さらにDNAの破壊以外にもエピジェネティックな機構の損傷の問題も指摘されており、これらは手が打てていないのが現状だろう。
 うまく行っている部分だけ宣伝しているだけで、あまりに内容的に乏しかった。
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