抗生物質耐性菌の脅威とどう立ち向かえるか?

 抗生物質耐性菌はガンを超す人類最大の脅威になるとして、国連も今、警告を懸命に出している(1)。現在、年間70万人が世界でこれが原因で死んでいるが、現在のまま増加すると2050年には毎年1000万人が死ぬことが予想され、ガンを超す人類最大の脅威となると見られている。

 耐性菌がここまで拡がる理由はいくつかありうるが、中でも問題なのが食の問題である。工業的農業が多様な土壌微生物の存在を危機に追い込み、耐性菌を多くの地域で発生させつつある。病原菌から守るために使われる殺菌剤がさらなる悪循環を生む。この殺菌剤が耐性菌への人類の脅威を加速させる(2)。
 さらに集約的に安い肉を作るファクトリーファーミング、安さを競うために家畜を詰め込み、感染症を防ぐために、そして成長促進剤として使われる抗生物質、そして家畜の飼料の多くを占める遺伝子組み換えでも抗生物質耐性タンパクが入っているものが多く、そして遺伝子組み換えの多くに使われる農薬グリホサートは抗生物質である。

 添付した地図はこうしたさまざまな耐性菌の出現が見られる地域を色づけしたものだ。青が植物への耐性菌で赤が人間への耐性菌を示している。青が工業的農業が盛んな地域と一致するのが興味深い。地図が小さく、日本の色が判断しにくいだろうが、残念なことに日本はどちらも危険な状態になっている。日本に住む住民にとっても怖い状況が迫っていることが視覚化できるのではないだろうか?
 
 この脅威に対しては医薬品にも農薬にも頼れない。しかし、解決策は存在する。
 
 土壌微生物を生かす農業はこの状況を変える力がある。土壌の中の微生物の生物多様性を保つことで、こうした耐性菌を抑制することができる。有機農業、アグロエコロジーによる農業は現在のこうした耐性菌による危機を防ぐ意味があることを明らかにした研究がいくつもある(3)。
 アグロエコロジーへの歴史的転換が今、要請される時代となっている。
 化学肥料、農薬の使用の抑制、さらには単一品種の大規模栽培から多品種輪作への転換など、実現可能なものへの着手は世界の義務と言ってもいいのではないだろうか? 日本政府は真逆に進みつつあるのだが。

(1) New report calls for urgent action to avert antimicrobial resistance crisis
http://www.fao.org/news/story/en/item/1191036/icode/

(2) Superbugs to Kill More People than Cancer if Industrial Agriculture Doesn’t Ditch Antibiotics and Pesticides
https://www.organicconsumers.org/blog/superbugs-kill-more-people-cancer-if-industrial-agriculture-doesnt-ditch-antibiotics-and

(3) Organic farming promotes biotic resistance to foodborne human pathogens
https://besjournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/pdf/10.1111/1365-2664.13365

Positive effects of organic farming on below‐ground mutualists: large‐scale comparison of mycorrhizal fungal communities in agricultural soils
https://nph.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/j.1469-8137.2010.03230.x

A Factory Farm Fungus Among Us
https://arerc.wordpress.com/2019/04/10/a-factory-farm-fungus-among-us/

ショートフィルム「土は生命体」

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