NHKのクローズアップ現代で取り上げられた世界と日本の大きなギャップ。有機農業がなぜ、世界でこれだけ広がっているのに日本ではそうなっていないのか? どうすればできるのか?
今日の長野の伊那谷の学習会でも中心テーマであったのはこの有機農業、生態系を守る農業が人びとの健康のみならず気候変動やウイルス蔓延に対する解決策でもあり、また自由貿易からも地域を守る手段でもあるということであって、個人的な嗜好とか一部の人の趣味の世界ではない。どうやっていけば日本で有機農業を拡げることができるのか、多面的に考えていかなければならないことだろう。
あらためて驚くことだけれども、中国はなんと今や、世界第3位の有機農業生産国になっている(1)。中国だけではない。韓国、フィリピン、タイ、ベトナムなど急速に有機生産が高まっている。アジアの中でも日本は蚊帳の外になってしまいかねない。
これを可能にしたものは何だろうか? 1つには農薬を使わない雑草防除、害虫防除の技術が広がったことがある。有機農業とはただ農薬や化学肥料を使わなければいいと思っている人がまだまだ多いが、実際に技術を持たずに自然と向かい合えば特にアジアモンスーン地域ではたちまち雑草や虫にやられてしまう。有害な農薬を使わずに自然の力を用いて農業をやるためにはこれは体系だった抑草、害虫抑制の方法を取り入れる必要がある。こうした技術の普及が進んだことが1つの原因。
そしてもう1つは参加型認証の普及を挙げることができるだろう。従来の有機認証はその負担がすべて個々の農家にかかる。日本の場合だと年間20万円前後の経費と審査のための作業がかなりの負担となる。これを農家相互、消費者や流通業者などが参加して関わることで個々の農家の負担を減らしつつ、多数の目でチェックして、より信頼できる認証をするというのが参加型認証(Participatory Guarantee System)。日本での最初のPGS認証団体となったのがオーガニック雫石では年間7000円ちょっとの負担で有機認証が可能。
そしてこのPGSのおもしろいところは単なる認証システムだけに留まらないことだ。農業技術向上のネットワークとしても機能することができる。地域を活性化する、地域を守る活動としても注目できるのではないか?
この方法は特にラテンアメリカで普及が進んだ。そして現在では欧米やアフリカ、そしてアジアでの普及がめざましい。
この認証団体だが、韓国では生協が担っている(ハンサリム生協)。中国ではファーマーズ・マーケットが認証団体に。フィリピンでは遺伝子組み換え反対運動でも先頭を担ったり、シードバンクを各地に作っているNGOが事務局となって、全国のネットワークを作り、参加型認証による有機農家を生み出しており、インドでは政府が地域協議会に委託して、その協議会が認証を進めており、膨大な数の有機農家が生まれている(2)。
この参加型認証PGSは日本の産直・提携が1つの源流となっているのではないだろうか? 生産者と消費者が信頼関係を作ってより安心できる食を作るという産直・提携とこのPGSはよく似ている。1つ違うのはPGSは外からも見やすいということかもしれない。地域での食を守るためにこのPGSという仕組みの導入はとっても有効だと思う。
世界で進むPGSを日本で最初に始めたのがオーガニック雫石(3)。まだ日本ではここだけ。その経験はとても貴重だと思う。オーガニック雫石は岩手の美しい山合いにある。そんな活動に学びながら、地域の食を守る方法を拡げていけないかと思う。
(1) FiBL & IFOAM – ORGANICS INTERNATIONAL the world of organic agriculture STATISTICS & EMERGING TRENDS 2020
https://www.fibl.org/fileadmin/documents/shop/5011-organic-world-2020.pdf
(2) 世界の有機農業に関する統計
ちなみに日本の有機認証農地面積では世界98位、有機認証が全農地に占める割合でいくと世界109位。
https://statistics.fibl.org/
有機農業の世界地図(要Flashちょっとobsoleteな技術だけど)
https://www.organic-world.net/statistics/maps.html
PGSの世界の拡がりを知るための統計地図(要Flash)
https://archive.ifoam.bio/en/pgs-maps
Global Map of PGS Initiatives
https://pgs.ifoam.bio/
FAO & IFOAM: Why invest in Participatory Guarantee Systems?
http://www.fao.org/3/ca6641en/ca6641en.pdf
(3) オーガニック雫石
https://organicshizukuishi.jimdofree.com/