化学肥料で人が死ぬ?

化学肥料による大気汚染のために人が命を落としているという研究が発表されている。米国では年に16,000人が命を落としているという研究が今年3月に、同じく米国で4,300人がトウモロコシ生産で使われる化学肥料が原因で命を落としているという研究が4月に発表されている(研究者はどちらも11名の共同研究、メンバーはほぼ同じ)。

 化学肥料が命に関わる例としては合成窒素肥料の窒素が硝酸性窒素として水や作物に入り込み、それを摂取して酸欠になって命に関わる事態になるというブルーベビーの問題が知られているし、発ガン性物質を作り出すことも知られている。その硝酸性窒素が川や海に流れ込んで魚などの生物が生きられないデッドゾーンが生まれることが知られる。さらには窒素酸化物として気候変動にも関わる。今回の研究はそれとは異なる。

 合成窒素肥料の窒素は土に撒かれた後、気化してアンモニアの小さな分子となって大気中に紛れ込む。これはすぐに拡散する気候変動ガスとは異なって、耕作地域周辺に留まり、その地域の住民に呼吸器系の疾患を生み、死に至るケースが多数あるとこの研究は指摘している。この研究だけでもちろん、断定はできず、さらなる検証が必要なのは言うまでもないが、化学肥料が周辺環境に与える影響についてさらに考える必要がありそうだ。

 化学肥料として与える窒素は気化したり、水に流されたりして、環境や健康に大きな被害を与える可能性が高い。それに対して、土壌微生物によって与えられる窒素は植物に直接供給されるため、流れにくい。土壌微生物の役割を再評価する必要があるのではないだろうか?

Air pollution from corn production might contribute to thousands of deaths each year
https://www.popsci.com/air-pollution-corn-production-premature-deaths

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA