気候変動の1つの現れとしての新型コロナウイルスとその解決策

 新型コロナウイルスの被害が世界で止まらない。特にブラジルでの感染拡大が急速に拡がっており、米国を上回り、現在世界でもっとも急速に拡大を続けている。
 新型コロナウイルスだけでなく、その他のウイルス、あるいは耐性菌(ウイルスではなく、バクテリア、病原菌)による感染症もここ近年急増している。さらに気候変動の激化はそれに拍車をかけるだろう。

 これまで気候変動の問題を話していても、どこかみな危機感がなかった。でもこのウイルスも気候変動がもたらす問題の1つと受け取れば、気候変動がもたらす被害が少しリアルに感じられるのではないか? これは命に直結する問題なのだから。気候変動によって感染症の危険は増すのだから。

 今回の新型コロナウイルスの由来はまだ諸説あって確定していない(1)が、近年、ウイルス感染を劇的に増加させている直接的な原因として、鉱山開発と工業型農業の拡大をまずあげたい。鉱山開発が森林を破壊し、そこでウイルスと共存していた動物たちが行き場を失う。さらに工業型農業・工業型畜産がその地域に入り、破壊された森林から逃げてきたコウモリと接触し、工業型畜産によって感染が拡大していく。

 だからこそ、この問題の解決策とは何か、をしっかりと見る必要がある。破壊的な鉱山開発や工業型農業の進展を止めることだ。資源大量消費型の社会を変えること、そして安い肉の大量消費をやめ、生物多様性を取り戻すこと。

 しかし、現在、アマゾンなどで起きていることはその真逆であり、破壊が急ピッチで進んでいる。これを止めなかったら、またさらに新たなウイルスや気候変動の激化に、世界の命が脅かされざるをえない。

 ブラジルのボルソナロ大統領はアマゾンの開発を公約に掲げ、昨年の就任以来、アマゾンでの鉱山開発に拍車がかかった。そして、アマゾンでの火災が拡大した。世界各地で起きている森林火災と同じ現象であるかのように勘違いされているのだが、ブラジルでの森林破壊の99%は犯罪行為であるという調査報告がある。天然林に火を付けて焼くことは犯罪行為だが、開発を公言する大統領の下では処罰されないと見越した大土地所有者層などが計画的にアマゾン森林を燃やしたのが実態だった。その火災のうち11%は森林保護地域、6%は非先住民族は立ち入りが禁止されている先住民族の森に侵入して燃やされていた(2)。しかし、ほとんど処罰されていない。昨年、最大となった森林破壊で処罰されたケースは最低だった。今年の森林破壊はすでに昨年のレベルを大幅に上回っている。

 こうして焼き払われた土地の6割は牧畜に使われるが畑になるのは1割、残りの3割はただ捨てられるという。牧場もかつての地から追われてきている。追い出したのは大豆やトウモロコシ畑である。こうして作られる大豆やトウモロコシは家畜の餌となり、世界中に輸出される。つまり、安い肉の生産がアマゾン破壊の大きな原因となっている。実際に世界最大の食肉企業JBSは違法に森林が破壊された土地を買って事業を拡大していると非難されている(3)。
 それを支えるのは海外投資だ。英国からの大量の投資(2000億円以上)がアマゾン破壊に責任のある食肉企業に行われている(4)。

 日本政府はこのブラジルでの大豆生産に世界の政府の中でもっとも深くコミットしてきた。その歴史は1970年代、ブラジルがまだ軍事独裁政権だった頃に遡る。税金を使って政府開発援助として大豆生産をブラジルの高原地域(セラード地域)で行い、今はその大豆はアマゾンを横切って日本を含む世界へと輸出されている。そして日本政府は現在も積極的に開発に関わっている。日本の関わりは大豆生産に留まらず、鉱山開発にも関わっている。

 アマゾンにおける鉱山開発は先住民族の生存の脅威となる。鉱山開発による直接的な森林破壊も脅威だが、鉱山開発に伴う汚染、金鉱山での水銀、アルミニウム開発での赤泥の発生など環境汚染が深刻な問題になっている。
 COVID-19蔓延下での鉱山開発の続行は先住民族やアマゾンの伝統的住民の間でのウイルス感染を拡げ、さらに将来的なウイルス出現の要因を作っている。
 エクアドルやペルー内のアマゾン地域では巨大な石油開発がこの今も進められようとしている(5)。

 現在の鉱山開発の資金の多くは海外からの投資でまかなわれており、年金基金など公的な資金もつぎ込まれている。ブラジル最大の鉱山会社はヴァーレ社であり、日本との関連はひじょうに強い。三井物産もヴァーレ社とは特に密接な関係を有していると自社のサイトで宣伝しているくらいだ(6)。

 ブラジルの市民組織はウイルス感染を悪化させる鉱山開発よりも命の方が重要であるとして、鉱山開発の停止を求める声明を発表している(7)。わたしたちはその声に耳を傾ける必要があるだろう。森林破壊に反対する現地の活動はウイルス感染もあって困難な状況だ。そんな状況下を利用して、ボルソナロ大統領は開発を加速させていると非難されている。
 
 ウイルスや気候変動に脅かされる未来ではなく、豊かな多様な生命が繁栄する未来を創るためには、こうした投資は止めなければならない。安い肉は遺伝子組み換え大豆やトウモロコシや抗生物質が大量に使われており、それを食べれば、健康を害するだけではない。それは私たちの子どもたちの世代の生きる環境まで奪ってしまいかねない。
 破壊を止め、生物多様性を取り戻すことこそ将来の命を含めて守る道であり、そのためには大量消費社会からの転換、生態系を守るアグロエコロジーへの転換が不可欠となる。

 今、ここでまずはブラジル産はもちろん海外産の安い肉を食べないことを決意することは重要だ(現在、ブラジル産の牛肉は入ってきていないが、鶏肉にも遺伝子組み換え大豆・トウモロコシは使われている)。

 私たちに日々の生活がさらなるウイルス感染の脅威を拡げ、将来の世代に影響を与えてしまうとしたら、それには断固ノーという声を上げなければならないと思う。

(1) Lab escape theory of SARS-CoV-2 origin gaining scientific support
https://www.gmwatch.org/en/news/latest-news/19412-lab-escape-theory-of-sars-cov-2-origin-gaining-scientific-support
武漢でのコロナウイルスの遺伝子操作がその原因であるという説も否定できない状況にある。

(2) Relatório inédito mostra que 99% do destmatamento feito no brasil em 2019 foi ilegal
https://www.dw.com/pt-br/relat%C3%B3rio-aponta-que-99-do-desmatamento-no-brasil-em-2019-foi-ilegal/a-53561239

(3) JBS, Marfrig e Minerva seguem comprando gado de áreas desmatadas irregularmente
https://racismoambiental.net.br/2020/06/05/jbs-marfrig-e-minerva-seguem-comprando-gado-de-areas-desmatadas-irregularmente/

(4) Revealed: UK banks and investors’ $2bn backing of meat firms linked to Amazon deforestation
https://www.theguardian.com/environment/2020/jun/04/revealed-uk-banks-and-investors-2bn-backing-of-meat-firms-linked-to-amazon-deforestation

(5) Na Amazônia, região mais biodiversa do planeta está ameaçada por investimentos bilionários em petróleo
https://brasil.mongabay.com/2020/05/na-amazonia-regiao-mais-biodiversa-do-planeta-esta-ameacada-por-investimentos-bilionarios-em-petroleo/

(6) 三井物産:三井物産の総合力Vale社とのアライアンス
https://www.mitsui.com/jp/ja/innovation/business/vale/

(7) Carta-denúncia Mineração e pandemia: essencial é a vida!
https://www.cptnacional.org.br/publicacoes/noticias/conflitos-no-campo/5241-carta-denuncia-mineracao-e-pandemia-essencial-e-a-vida

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