BBC: 人類のせいで「動植物100万種が絶滅危機」=国連主催会合
生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォームIPBESが作った1800ページに及ぶ報告書が出て、世界中で反響が大きい。BBCの見出しはそのものずばり。このままでは100万種に及ぶ動植物が絶滅危機に陥り、世界の生態系は深刻な状況に追い込まれる。人類のせいで。
このIPBESは国連環境計画(UNEP)、国連開発計画(UNDP)、UNESCO、FAOの傘下で、生物多様性問題での国家の取り組みをサポートするための機関。生物多様性条約やワシントン条約(CITES)の具現化のための機構でもある。日本政府もメンバーに入っている。
これまでも生物多様性が激減することを指摘する研究は多数出ているけれども、今回の報告書はもっとも包括的に扱ったものと言えそうだ。しかも各国政府の行動指針となるべきものとしてこの報告書が出たことの意義は強調していい。日本政府を含むすべての政府はこの事態を避けるために行動しなければならない。もっとも、これには強制力が確保されているわけではないが、政府の政策を変えていく一つのきっかけにしていかなければならないと思う。
今回のIPBESの報告のような危険を指摘する研究はいくつも発表されている。このままでは第6期の絶滅期に直面する可能性を指摘した研究も今年2月にAFPが報じている。
「人類が食物生産の方法を変えなければ、数十年後には全ての昆虫が絶滅の道をたどることになる」とAFPが報道した研究は警鐘をならす。生物多様性を激減させる原因には人類によるさまざまな活動が考えられるが、中でも大きな影響を与えているのが工業的農業の拡大であることは疑う余地がない。英国ではすでに昆虫類が6割も減少してしまっている。昆虫が姿を消せばその昆虫に依存する植物も動物も姿を消す。生態系が崩壊する。
食物生産の方法を変えなければ昆虫が絶滅する、しかもたった数十年後にそれは来る。生態系を滅ぼす工業的農業ではなく、生態系を生かす農業、アグロエコロジーへの転換が国連レベルの課題となったのもこのような時代的な現実が大きな力となっているといえるだろう。
その時代的要請で世界が動いている中、日本政府は真逆の方向に、農地の集約化、大規模化、企業化という工業型農業の推進にひた走る。世界が禁止に向かう農薬を次から次へと承認・規制緩和し、多様な種子を減らして、集約させ、民間企業に委ねようとしている。この政策の問題は農業に留まらず、水産業、林業にも通じる。
深刻なのはそうした問題に通じた研究者も日本では少ないことだ。最近、「持続的発展」をテーマとした若手研究者の会合で発表してきたが、その反応のひどさには頭痛を感じた。世界大で取り組まれている大問題にまったく無頓着。海外での情報読まない人ならともかく、それが仕事でもあるはずの若手研究者がそれでどうするの、と唖然とした。
今の世界の動きからしたら、今の日本政府の政策があまりにあまりのおかしな方向に向かっているにもかかわらず、疑問にも感じていないようだった。そして、政府を批判するような研究には研究費がもらえないから研究者の多くは批判しなくなっていくのだろう。知的荒廃が進行しているように思えてならない。
このままでは日本はまっさきに滅びるしかないだろう。どれだけ現状を理解し、現状を変える意志を持てるかが問われている。