世界が有機農業・アグロエコロジーの方向に向かっていることは間違いない。ここ20年近い間に有機市場は5.5倍近い急拡大をしているだけでなく、国連FAOも生態系を守る農業アグロエコロジーの普及を2013年から掲げており、ラテンアメリカ、アフリカ、そしてフランスや英国各国などでもアグロエコロジーを政策に取り込み始め、農薬や化学肥料の使用の規制も始まっている。農薬・化学肥料は生物の絶滅、土壌の劣化・損失や気候変動を激化させる原因としても注目され、大幅に減少させることが国際的に求められる状況になってきた。
農薬、化学肥料、遺伝子組み換え種子を手掛けるアグリビジネスにとって、大きな敗北は2010年以降、国連までもがアグロエコロジー推進に進んでいったことだろう。しかし、彼らは黙って歴史の舞台から下がろうとしてはいない。それどころか、今、国連FAOを乗っ取るばかりの勢いでロビーを重ねている。 “国連を乗っ取ろうとする多国籍企業” の続きを読む
ベトナム戦争の犠牲者が問うモンサントなどの企業責任
フランスで歴史的な裁判が始まった。米国のベトナム戦争での枯れ葉剤作戦によって枯れ葉剤を浴び、自身の健康被害のみならず、生まれた子、孫にも深刻な健康被害が出たトラン・ト・ンガさんが米国化学企業14社を相手に起こした。日本語字幕の付いたビデオをぜひみてほしい(5分10秒)(1)。 “ベトナム戦争の犠牲者が問うモンサントなどの企業責任” の続きを読む
クローズアップ現代の報道の意義:日本の現実を見つめよう
クローズアップ現代「世界でどう闘う?農産物のJAPANブランド」はとても画期的だったと思う。その理由第1。「モンサント文書」。実際に報道されたのは米国のラウンドアップ裁判でのモンサント社の社内文書(1)。モンサントは自社の研究でラウンドアップの人体への危険性は実際につかんでいながら知らせなかった。これがモンサントの敗訴の決定的な理由となっている。もっとも、番組の時間の多くを使っていたのはバイエル社による弁明で、衝撃は大いに弱められているが、実際に白血病になって訴訟を起こした人のインタビューやドウェイン・ジョンソン氏の裁判の映像含めて、流れたことは意義が大きい。 “クローズアップ現代の報道の意義:日本の現実を見つめよう” の続きを読む
世銀:化学肥料の神話は終わった
かつて解決策だと信じられてきたことがそうではないことがわかっても、なかなかその神話を捨てられないことがある。農薬は世界の農業を解決すると思っていた人は多かっただろう。でも、今、世界は脱農薬に進みつつある。
農薬について関心は高くても化学肥料については関心はまだ高くない。でも化学肥料が実は問題が生まれる起点となる。そして化学肥料が環境や健康を破壊していることを知っている人はまだ少ないのかもしれない。
あの世界銀行(世銀)は化学肥料の利用をこれまで世界に大々的に推進してきた。その世銀が今やその危険を公言する事態になっている(1)。 “世銀:化学肥料の神話は終わった” の続きを読む
EUが禁止した農薬を世界で一番輸入する日本
ヨーロッパは世界の環境先進地域として有機農業の割合も高い上に、それを現在大幅に高めようと各国政府が務めている。使われている農薬や化学肥料も全体としてさらに大幅に減らす計画が立てられている。さすがである。
ところが、このヨーロッパが偽善的であるとして、ヨーロッパの市民団体によって告発されている。なぜならば、危険過ぎるということでヨーロッパで使用が禁止されている農薬をヨーロッパの化学企業が製造し、世界に輸出しているからだ。自分のところでは危険過ぎて使えないけど、他のところであればいい、として作って売ってしまうという偽善性。
そして、世界のどこがヨーロッパの禁止している農薬を一番輸入しているかというと…、 “EUが禁止した農薬を世界で一番輸入する日本” の続きを読む
除草剤ラウンドアップへの代替案:スチームや温水による除草
モンサント(現バイエル)の除草剤ラウンドアップ(グリホサート)、世界で規制が進んでいる。一方、日本ではラウンドアップの販売額が毎年跳ね上がっている。日本では農業分野だけでなく、学校や公園、道路など子どもが遊ぶ環境でラウンドアップを使うケースが増えていることが考えられる。
米国やオーストラリアでもラウンドアップの使用を禁止した自治体はとても多くなっている。そうしたところではラウンドアップを使わずにどうやって除草をしているのだろうか? “除草剤ラウンドアップへの代替案:スチームや温水による除草” の続きを読む
堆肥に含まれるグリホサートが農作物に被害を与える
家畜の糞を利用した肥料が作物の生育に悪影響を与えるとする研究が発表になった。
世界で規制が強まるモンサント(現バイエル)の除草剤ラウンドアップ(成分名グリホサート)、腸内細菌に影響を与え、人びとの健康に大きな影響を与えている可能性に世界が注目している。もし、そうならば遺伝子組み換え飼料を与えた家畜の糞は問題あるのではないか、という質問を学習会などでも頻繁に受ける。
家畜の糞を肥料にするためには発酵させるが、普通は温度はかなり高くなる。でも遺伝子組み換え飼料を食べさせた糞は発酵させても温度がなかなか上がらず、肥料として成熟しにくいという話は聞いたことがある。確実な実験結果がほしいところだったが、ついに出てきた。 “堆肥に含まれるグリホサートが農作物に被害を与える” の続きを読む
ラウンドアップやジャンクフードと闘うメキシコ
メキシコ政府がTPPや米国・メキシコ・カナダ協定などの自由貿易協定・経済連携協定によって、メキシコでの種子の権利を危うくしようとしている現状について書いた(1)けれども、それだけで終わってしまっては不当な扱いになるだろう。
なぜなら一方でメキシコ政府はかなりがんばっているからだ。その最大の象徴はモンサント(現バイエル)の農薬、ラウンドアップ(その主成分グリホサート)の禁止に向けた措置だと言える。 “ラウンドアップやジャンクフードと闘うメキシコ” の続きを読む