遺伝子組み換えのBt毒素が土に与える影響

 土壌を健全に保つ上で不可欠な土壌微生物は化学肥料や農薬によって影響を受け、その散布によって土は傷んでいく。さらに遺伝子組み換え作物が土壌に与える影響が明らかになりつつある。

 ほとんどの遺伝子組み換えトウモロコシ、コットン、一部の大豆にはBt毒素が入っている。これは遺伝子組み換え企業に言わせれば特定の害虫だけを殺す毒素ということなのだが、この毒素は害虫だけでなく土壌微生物にも大きな影響を与えているという研究がある。土壌の中の細菌の数がBt遺伝子組み換え作物を植える畑では減ってしまうという(1)。

 このBt毒素のBtとはバチルス・チューリンゲンシスの略で、元は土壌細菌であるが、虫によってはこの細菌を腸に入れると、毒素効果を発揮し、虫の腸を破壊してしまう。元のバチルス・チューリンゲンシスは自然界に存在する細菌なので、これを集めたBt剤は有機農業でも容認される安全な殺虫剤として使われている。これに触れた虫は死ぬが、Bt剤は太陽光線の元で分解され、作物が出荷される頃にはなくなっている。散布する時に吸い込まないように配慮されていれば大きな害を与えることはまずないという。

 しかし、遺伝子組み換え企業はこの自然なものを「スーパー毒素」に変えてしまった(2)。このバチルス・チューリンゲンシスを遺伝子組み換え作物が細胞の中に作り出すようにしたものがBtコーン、Btコットンなどと呼ばれるが、このGM作物内部のBtは自然界に存在する細菌とは姿を変えたタンパク質に変えられている。その毒素は分解されて消えることはなく、家畜やわれわれの体の中に直接入っていく。自然界に存在しないこのBtタンパクが免疫反応を引き起こす可能性がすでに指摘されている(3)。

 牛糞などを肥料に使う際、使われる抗生物質や遺伝子組み換えに含まれる抗生物質耐性遺伝子が土壌に与える影響が懸念されるが、これに加え、Bt毒素が与える影響も考えなければならなくなるかもしれない。細菌ならば消化によって死滅するかもしれないが、遺伝子組み換え企業が作り上げたBt毒素は消化されにくいタンパク質で容易には分解されない。われわれの人体にも吸収され、血液の中からも発見される。
 循環が不可能な技術には根本的欠陥がある。まさに原発とよく似ている。

 希望を感じるのはNon-GMO作物のリバイバルが始まっていることだ。インドではインドの在来コットンDesi Cottonが生産のほとんどを占めていたが、モンサントが種子会社を買収し、95%のコットンがBtコットンになってしまい、この在来種のコットンが消えてしまう可能性もささやかれた。しかし、多くのシードバンクで、政府のジーンバンクなどから救い出された在来種のコットンのタネが配布され始め、在来種コットンが復活しつつある。

 FAOによれば世界でのBtコットンの割合は76%、つまり安い木綿の服のほとんどはBtコットンでてきていると考えるしかない。もしオーガニックに変えることができたら世界の土をそれだけ守ることができることになる(個人的には実践できていないけれども)。Btコットンの服が人の健康に与える影響についてはまだ確たる情報を見ていないが、最近のBtコットンは同時にモンサントの除草剤グリホサート耐性でもあり、赤ちゃんのおむつや生理用品からグリホサートが検出されて大騒ぎになっている(5)。

 コットンは遺伝子組み換えでなくとも農作物の中で最も農薬が使われる作物とされる。それだけにオーガニックを選ぶことは大きな意味がある。健康と地球を壊さないために。服もすべてオーガニックにしたいものだ。

(1) Characterization of the mucosal and systemic immune response induced by Cry1Ac protein from Bacillus thuringiensis HD 73 in mice

MONSANTO IS NOT GANDHI: CRIMES AGAINST NATURE AND SOCIETY ARE NOT “SATYAGRAHA”

Monsanto is not Gandhi: Crimes against nature and society are not “Satyagraha”

(2) Have Monsanto and the Biotech Industry Turned Natural Bt Pesticides into GMO “Super toxins”?

(3) Effect of Bt-transgenic cotton on soil biological health

(4) Revival of desi cotton

Desi cotton

(5) Toxic Herbicide Glyphosate Linked to Infertility Found in 85% of Tampons

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