食料自給率100%は可能:奴隷国家を抜け出すために

 あぁ、もうこの思考停止なんとかしてほしい。
“日本の食料自給率向上を「米国が絶対許さない」訳
米国にとって日本は「食料植民地」となっている”。
東洋経済:日本の食料自給率向上を「米国が絶対許さない」訳

食料植民地というのは史実としてその通りだろう。肝心なのはそれをどうするかだ。でもそれには何も触れられていない。

政治的に日本政府が米国政府に隷属し、実質的に独立国としての政治を行っていないというのは明らかな事実だろう。日本政府による米国政府への密約が存在していることも明らかにされてきている。
 
 この問題は軍事面や外交面だけではなく、農業や食料政策にも及んでいる。たとえば種子法廃止や種苗法改正もそうだ。モンサントや住友商事も入るバイオテクノロジー企業のロビー団体BIOは米国通商代表部にUPOV条約の厳密な実行を要求している。当然、米国政府はそれを日本政府に求めただろう(ただし、これは最近のことではなく、そのはるか前から1998年の種苗法改正の前からの既定路線で、それはすでに日本政府自身の方針に内在化されてしまっている)。遺伝子組み換え生物規制や「ゲノム編集」生物規制も米国政府の関与は大きいことは言うまでもない。
 米国の農産物を大量に買うことを軸に農業政策を組み立てるから、国内の食の政策は骨抜きになる。だから日本の農業の発展は常に国内をすっとばして輸出の問題にすり替えられる。でも輸出ではごく一部の人しか儲からないから、日本の食の政策・農業政策は貧困なままだ。これこそ食における安保問題だと言っていいだろう。
 
 だけど、僕がこうした問題を話す時は米国の関与についてはあまり取り上げない。取り上げても、結局、多くの人がそこで思考停止してしまうからだ。「結局、悪いのは米国」。だからどうなの? だから仕方ない? 米国に積極的に従っているのはどこの誰? それが問われなくなるからだ。王様が王様であるのは奴隷が奴隷であり続けるからだ。奴隷が奴隷であることを拒否すれば自ずと変わってくる。でも、日本では奴隷であることを確認することでなぜか安心してしまう人がどうやらいるように思えてならない。
 
 日米合同委員会があって、実質的な政策はそこが立て、国会は単なるお飾りであるのが日本国家の現状だろう。だからと言って、すべて自立は不可能だからやめるというのは明らかな思考停止だ。米国側も日本側は米国側ですら求めてもいない従属を自分からしている、と感じているだろう。米国側が求めていないことまでもできないと最初から諦めているのだから。
 
 「そんなこと言っても、自立を目指した政権はあっという間に潰されたじゃないか」。それも事実だろう。でも、ならば自立を目指すことすらやめるというのか?
 
 状況は大きく変わりつつある。米国は国内での食料大量生産で世界に戦略物資として用いることで米国のための世界秩序を作り続けてきた。しかし、それはもう持たない。米国の覇権が弱まっているというだけではない。米国の農業も変わらざるをえない局面を迎えている。
 
 米国では特に穀倉地帯である中西部(別名コーンベルト)で大豆、トウモロコシなどを大量栽培してきた。そのほとんどが遺伝子組み換え。その環境負荷は大きく、土壌は流出が激しく、すでに半分の表土が失われた地域が広がる。土が失われてしまえばもう農業はできなくなる。水源も失われ、降雨や気温変化で今後の安定した収穫はさらに困難になる。大豆やトウモロコシを大量生産して、世界に輸出する農業はもう持たなくなりつつある。
 大豆やトウモロコシの単価はきわめて低い。それを売るだけでは儲けにならず、補助金頼りだ。自然災害や感染症による打撃が続けば、それでも持たずに下火にならざるをえない。
 
 この状況に対して、米国で急速に勢いを増しているのがRegenerative Agriculture、環境再生あるいは再創造型農業とも言うべきものだろう。化学肥料の大量投入をやめ、カバークロップ、輪作、不耕起によって土を守る、土を創る農業への転換が盛んになっている。そして、世界中の畜産農家に飼料を輸出するよりも米国内で循環させた方が利益が大きいことに多くの農家が気がつき始めた。土が甦るだけでなく、収入にもなるのだから勢いがつくわけだ。
 だから、今後、急速に米国の農業は変わらざるをえない。日本が待っていても、米国から穀類はかつてのようには入ってこない時代がやってくるだろう。それでも日本は思考停止を続けるのだろうか? 日本が飢えてもその対策は米国政府が許さないとでも言うのだろうか? そこまで奴隷を続けろというのだろうか? そんなのありえない。
 
 「2050年、日本は食料自給率100%を達成した。この動きは2022年に始まる。この年、国会で地方自治体に食料生産に関わる権限を大幅に移譲する法案を可決。それ以降、地方自治体間の連携で自給力を高める努力が進められた結果だった。有機農業が占める割合も2022年に成立した「みどりの食料システム戦略」が設定した目標を大幅に上回る50%を達成した」

 こう振り返ることができるようになることは、まったく不可能だとは思わない。不可能であると考える発想そのものが不可能なのだ。

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