「ゲノム編集」サーモンをノルウェーで海面養殖?

 CRISPR-Cas9を使って生殖機能の遺伝子を破壊し、より大きく成長できるようにしたサーモン、ノルウェー政府の検討では否定的な結論になったというが、一方で、EUで「ゲノム編集」生物の規制緩和が準備されていて、それが通れば、こうした問題ある遺伝子操作生物が自然界に放たれてしまうかもしれない。
 
 サーモンは川で生まれ、北大西洋の寒い地域で3年から5年育つ。そして川に戻ってきて卵を産み、そこで命が終わる。新たな命を川に託して。高緯度地域に住む先住民族はこのサーモンのおかげで太陽の光が十分届かない地域でも健康を保つことができる。サーモンに感謝と祈りを捧げる文化を国境を越えて共通して持っている。そして、サーモンは陸の生き物も支えてきた。
 この遺伝子操作サーモン(CRISPRサーモン)は生殖機能を破壊することで、生殖と共に死んでいくサーモンを生きさせることができる。だから普通のサーモンよりも大きく育つ。しかし、そんなサーモンは果たして何をもたらすだろうか?
 
 ドイツの非営利の研究者団体TestbiotechはこのCRISPRサーモンが海面養殖の生け簀から逃げた場合、サーモンの生態に影響を与える可能性を指摘する。若いサーモンとの競合によって個体数が減り、また不妊とは限らない。また生け簀から逃げなくても、このCRISPRサーモンは病気になりやすいため、病原菌の蔓延の原因となる可能性がある。遺伝子操作されたサーモンは遺伝的にも多様性であり、混乱は避けられない(1)。
 
 ノルウェー政府に移植された科学者たちが冷静な判断をしてくれたようなので、ホッと一息つきたいところなのだが、しかし、EUで進んでいる「ゲノム編集」生物の規制緩和が始まってしまえば、こうした遺伝子操作生物は自然に放たれてしまうだろう。その責任は誰が取るのだろうか?
 
 11月19日、70人以上の科学者がEU議会や加盟国農水大臣、環境大臣に向け、「ゲノム編集」生物の規制緩和を求める欧州委員会の提案を拒否することを求めた(2)。
 
 このCRISPRサーモンのケースを見れば、「ゲノム編集」生物の規制緩和がバイオハザードを生む可能性は高いと言わざるを得ない。そしてそれは取り戻すことができない。今、慎重に対応しなければ大変な事態になりかねない。
 
 今のところ、海面ではない陸上養殖だが、世界で唯一の「ゲノム編集」魚を作っているのが日本。排水は垂れ流しなので、海面でなくても海洋汚染の可能性はあり、安全性にも疑問がある。
 しかし、京都府宮津市に加えて、富山県や静岡県でも養殖場を作る話が進んでいる。そして、稚魚が全国の陸上養殖場に供給される日も遠くないかもしれない。
 
 石川県では12月4日に「ゲノム編集」魚を作るリージョナルフィッシュ社のCTO(最高技術責任者)の木下政人氏が講演するという。公金使って販売・生産促進というところか(3)。

(1) New GE salmon: Let’s talk about the risks!
https://www.testbiotech.org/en/news/new-ge-salmon-let-s-talk-about-risks

(2) Press Release (科学者たちの声明)

Press Release

(3) 食の安全・安心の確保に関する講演会・意見交換会「“ゲノム編集食品”について知ろう」
https://www.pref.ishikawa.lg.jp/syoku_anzen/ikenkoukan/kouenkai_2023.html

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