AIを使った「ゲノム編集」生物

生成AIは世界を変えつつある。膨大な情報を処理するその能力によって、今、AIと「ゲノム編集」や合成生物学によってデザインされた生物(AI生物)の開発が今後、急速に進むことが想定される。そして、それが大きな問題を引き起こすことが当然、懸念される。
 生成AIには巨大な可能性がある。それを無視できる状況ではすでになくなっている。社会は急速に生成AIによって変えられていくだろう。ただし、それが持つ欠陥を理解していなければ、未来社会は絶望的な社会になりかねない。しっかりとした規制の下に管理することが不可欠だ。
 

AI生物とは何か、なぜAIが必要とされるのか?

 
 「ゲノム編集」で特定の遺伝子の一部を損なうことで新たな品種としてトマトや魚が日本でも作られている。これは1つの遺伝子に作用させたごく単純な処理であって、遺伝子操作としては序の口にあたる。たとえばヒトの場合だと、2万弱の遺伝子に約60億の塩基がある。その遺伝子からmRNAが作られるが、その作られ方で1つの遺伝子から複数のmRNAが作られる可能性がある。また1つのタンパクが複数のmRNAからの代謝物からの作用で生まれることもある。複数の遺伝子が関わるものを考えれば膨大な組み合わせができることになる。
 その中で、得たい属性を持つ遺伝子操作を実現する方法を人の力で探し出すと時間も労力も膨大となる。「ゲノム編集」では操作の対象となる塩基パターンを作り、遺伝子の中の特定の箇所を破壊する酵素を作るが、どの遺伝子のどの塩基を狙うのか、AIにやらせれば格段に早くできるということになる。実際には「ゲノム編集」や合成生物学、人工DNA、RNAを組み合わせれば、AI生物は完成するだろう。
 たとえばリグニン生成量を減らされた木は製紙企業によって通常品種改良によって開発されているが、21の遺伝子を操作することによる樹木の木材組成、成長速度、その他の特性にどのような影響を与えるか、AIで予想するツールが米国企業TreeCoによってすでに開発されている。
 このシミュレーションに沿って、最適な遺伝子操作を行えばAI樹木が作れてしまうことになるだろう。
 すでにこうしたAIと「ゲノム編集」技術を組み合わせたスタートアップ企業が作られ、バイエルやコルテバなどの4大遺伝子組み換え企業が投資している。こうした技術を使った農作物や畜産物が近い将来出てくることが予想される。
 

AI生物が持つ危険

 
 AIが遺伝子の機能やそのネットワークの働き方をすべて熟知しているわけではない。生成AIが元とするデータが間違っていればとんでもない生物が作られてしまう。生成AIに画像を作らせることはすでに一般化しつつあるが、画像であればおかしな人の画像ができても、まだ影響は限られるかもしれない。しかし、生物として、環境の中に出てしまえば、生態系を狂わせる可能性がある。それを食べることで人の健康に何が起きるかもまた未知数である。
 

AI生物の規制が必要

 
 生成AIは忌避できない。生成AIを忌避したところで問題が解決されるわけではない。また生成AIの利用によって、生物の病気を解決する方法などの解明も進むだろう。生命操作の方向に利用するのか、それとも生命の謎の解明に生かすのか、その使い道によっては大きな違いが生まれてくる。
 下手すれば生命操作に基づく優生思想による差別的な恐ろしい社会とバイオハザードの脅威にさらされる未来がもたらされ、また一方で、より生態系を深く理解する方向の実現に向けられる可能性も存在する。
 
 肝心なのは前者のような利用を禁止して、後者への活用を可能にすることではないだろうか? もっとも現在、この技術はGoogleなどのIT企業や4大遺伝子組み換え企業が大きな影響力を持っている。一方、現在各国政府は「ゲノム編集」生物に関する規制する権限を放棄して、企業の自由に任せようとしている。このような状態で開発が進められれば、かなり危険な方向に行くことは想像できる。まずは「ゲノム編集」や合成生物学をしっかり規制することが重要だろう。

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今回の記事の元となった情報
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