朝日新聞がまた環境破壊企業礼賛記事を流す。ユーカリ植林は森ではない。

 朝日新聞が書くブラジル情報は絶対に信用してはならない。黒を白と言いくるめる記事を何度も見てきた。世界一生物多様性の高いセラードを破壊した農業開発、国際常設民衆法廷が人類に対する犯罪と判決を出した開発を「不毛の大地を緑の穀倉地帯に変えた奇跡の開発」と褒め称え、世界が数々の調査に基づき、牛肉生産をアマゾン破壊の原因として規制を強める中、その関係を否定する記事をまともな検証もせずに流し、さらに7月31日には「緑の砂漠」を作り出した日本の政府開発援助を使った事業から生まれた企業、セニブラを礼賛する企業広告としかいいようのない記事を出した。
 
 本当に呆れるしかない。企業の言い分をそのまま垂れ流しているだけ。実際に現地まで足を運んでいるのであれば、市民社会がどうユーカリ植林を見ているのか、実際にこの企業が現地にどう見られているのか、取材すべきだが、その取材はゼロ。企業側が取材してほしいところだけ取材している。
 
 ユーカリ植林、何が問題か?
1. 水資源を破壊する
 ユーカリはオーストラリアに自生する植物。砂漠的な環境でも生き延び、ブラジルの環境では植えてから4〜7年で伐採できるサイズに急成長するため、紙パルプの原料として大量に植えられている。しかし、まず、水を吸いすぎるため、大量に植林してしまえば水資源を破壊してしまう。湖が枯渇したり、川の流量が大幅に下がるケースはブラジル各地で報告されており、セニブラの地域でも農業に大きなダメージを与えている。
 
2. 生物多様性を激減させる
 ユーカリは他の生物を生育させないための物質を出すため、ユーカリ大量植林によってユーカリ以外の植物が激減する。これは地域の虫や動物が食べるものが激減することも意味しており、その地域の生物多様性は激減する。世界的にも生物多様性の高い豊穣な地域が沈黙の世界に変わる。ユーカリに使われる農薬の影響で川の魚も激減している。
 だからブラジルではユーカリ植林は「緑の砂漠」として批判されている。しかし、その批判には一言も言及がない。
 
3. 農薬の使用で住民の健康、生態系に被害を与える
 ユーカリ植林に使われる農薬は植林に従事する労働者、周辺住民の健康に大きな影響を与えている。植林地域のコミュニティを歩くと、健康被害の訴えが数多く寄せられる。そしてその農薬は周辺の生態系にも大きな影響を与えている。
 
4. ユーカリ植林は雇用をほとんど生み出さない。地域コミュニティの崩壊
 広大な地域でのユーカリ植林は機械化が進んでおり、雇用は広い地域の中でごくわずかしか生み出さない。セニブラの地域であれば7年に一度の伐採、21年に一度くらいの植林(伐採の後、2度は芽が出て植林は不要)、あとはこれまた機械化された農薬散布くらい。農業であれば数ヘクタールあれば十分生きていけるか、数万ヘクタールで数人しか雇用を生まないだろう。水資源の破壊、生物多様性の激減、農薬によって農業を続けるのは困難になっているため、生きる術を失った地域コミュニティは崩壊してしまう。
 
5. 紙パルプ工場が出す廃液が健康被害を生み出す。
 紙パルプ産業は環境負荷が高い。工場排水は周辺住民が飲料水などで頼りにしているドーセ川に直接出され、周辺住民ではがんなどが多発した。

2023年6月ブラジリアでの行動。横断幕は「ユーカリ植林は森ではない」2023年6月ブラジリアでの行動。横断幕は「ユーカリ植林は森ではない」
 
 書き続ければいくらでもあるのだが、これだけ環境破壊、生活破壊、地域破壊を尽くしたセニブラ(ニはニッポンのニで、ブラはブラジルのブラ。つまり二国間の政府が作った企業ということ)は現地のNGO、CPT(Comissão Pastoral da Terra)も問題にして調査をしてきている。だからCPTに連絡を取ればいくらでも情報は取れる。CPTはカトリック教会を基盤に軍事独裁の時代から貧しい人びとのために活動を続けている歴史が長く、信頼度もひじょうに高い市民組織であり、連絡することは容易であったはずだ。ブラジルの市民社会の中ではユーカリ植林が「緑の砂漠」であり、ユーカリ植林は森ではない、ということは繰り返し、数十年前から語られている。
 
 結局、中立だの両論併記などといいつつ、ブラジル情報では一切両論併記すら一顧だにしなくなり、ひたすら国や企業の礼賛記事を出し続けるのが朝日新聞。ほとんどこれは報道・ジャーナリズムとは無縁の企業広報会社としかいいようがないだろう。
 
 先日のアマゾン森林破壊と牛肉との関係に関する記事に対しても朝日新聞に問題を伝えたが、何の反応もない。本当に両論併記ということであれば僕が反論記事を書く機会を与えられてもいいようなものだが、朝日新聞は動かない。
 
 ブラジルの市民が感じていることは一切無視され、大企業の言い分ばかりが人びとに振りまかれ、真実とはほど遠いことがあたかも現実であるかのように思い込まされる。そこで失われるものは現地の人びと、さまざまな生命の未来であり、そしてわたしたちのお金がそのために使われてしまうのだ。ブラジルからのパルプを買うことがあたかも環境保護につながるかのような幻想を持たされて。
 
 今後、販売部数が減った新聞はこのような記事を量産しつづけるのだろう。悲しいことに、まともな記事を書く記者は左遷され、またまっとうな地方新聞社も次々に姿を消していくのではないか。しっかりとした情報がなければわたしたちは判断を間違える。果たして、今後未来の私たちの情報世界をどうしていくのか、真剣に考えていく必要がある。

本当にこのタイトルひどすぎる。
「紙づくりは森づくり。ブラジルの地で出会った森林保護と地球環境へのパッション」
https://www.asahi.com/and/article/20230731/423954437/
「モノカルチャー植林は森ではない」というのが今の世界の声。時代錯誤もいいところ。グリーンウォッシュの極み。

今年の6月23日には伊藤忠がこんなひどい両面ぶちぬき広告を日経新聞に出している。
ユーカリ植林がSDGsという時代錯誤の全面広告。伊藤忠は世界の恥

僕が1992年〜94年までセニブラに関する調査を行った内容は以下の番組に映像記録作家の岡村淳さんがまとめている。
緑の砂漠か緑の再生か ブラジルのユーカリ植林と日本

写真は今年首都ブラジリアの官庁街でやったデモ。横断幕は「ユーカリ植林は森ではない」。朝日新聞よ、せめてこの動きも伝えるべき!

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