あまりの時代錯誤の伊藤忠の広告に呆れて言葉が出てこない。
昨日、現在の気候危機や生物大量絶滅危機の直接的な原因を作り出した一撃が1970年代に南米で軍事独裁政権によって始められた新自由主義的政策であることを学習会で報告させていただいた。それらはユーカリ植林であり、セラード開発という形で進行した。それを可能にしたのが日本政府の政府開発援助であり、伊藤忠を含む製紙会社連合による投資だった。
その学習会の翌日にこの伊藤忠による左右全面ぶち抜き広告が日経新聞に掲載された。あたかもユーカリ植林がSDGsであるかのように言いたげである。
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軍事政権によるエコサイド、ジェノサイドとして非難されている「緑の砂漠」化は、日本ではなんと50年経った2023年になっても、SDGsだとして通用するのだろうか？
すでにブラジルでは1960年代後半から「緑の砂漠」という言葉は使われて、ユーカリ植林は非難されている(1)。60年近く経っても学べないとは。恥以外の何ものでもない。
50年前に右に掲げられた広告が掲載されたという。今から50年前の1973年は、ブラジルでは軍事独裁が厳しく、拷問によって少なからぬ人が命を失い、亡命を余儀なくされる人も続出していた時代である。
「エコやSDGsという言葉が誕生する前のこと。
せめて自分たちが使う分ほど、
遠い国で、同じ志を持つ仲間たちと、
ユーカリを植え始めた商人がいました。」
その同じ志を持つ仲間とは軍事独裁をひく軍部とそのお仲間でしたね。
その時代、先住民族やキロンボーラ（黒人コミュニティ住民）、小農民が土地を追われ、あるいは土地を失い、あるいはユーカリによって水が吸われて農業や狩りができなくなって、どれだけの人が土地を失ってしまったのか、そして今なお、その影響で「緑の砂漠」化した地域では満足な生活が成り立っていないことを知らないのですか？
さらに伊藤忠や日本の製紙会社連合によって作られたセニブラ（ニは日本のニ）の紙パルプ工場が作り出す汚染によって近隣コミュニティの人びとは健康被害に苦しんでいるのですが、そのことをどれだけ知っているのでしょうか。未だにこれらの開発をSDGsとよぶのでしょうか。
こんな広告が堂々と掲げられる日本は本当に最低である。
「それはブラジルの軍部が悪い」と責任転嫁することはできない。というのも、軍部だけでなく、この時代の人権無視に加担した企業に対する責任追及も今のブラジルでは始まっている(2)。セニブラと並んでブラジルを代表する紙パルプ企業アラクルース（現在はスザノ）は軍部と結託して、ユーカリ植林の用地を先住民族やキロンボーラ・コミュニティから奪い取ったとして、その責任が追及されている。同様の非難はセニブラや伊藤忠にも向けられて当然のことである。
伊藤忠はブラジルでのユーカリ植林を実現するために1967年、軍事クーデタが起こされたブラジルに即座に入り込んで、日本政府から予算を引き出すことに成功したことを得意げに新聞広告にしている。この事業の責任の最大を担うのが伊藤忠であることをまざまざと自ら示した広告になっている。南米の軍事化と新自由主義をバックアップした日本企業と政府の責任が追及されるべきだ。
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2021年には民衆法廷によって、セラード農業開発は人類に対する犯罪であるという判決が下っている(3)。しかし、日本政府は「不毛の大地を緑の穀倉地にした」奇跡の開発プロジェクトとして自画自賛をやめない。そして、生物多様性を破壊した「緑の砂漠」を作り出したユーカリ植林に対して、その人権侵害と生態系の破壊に対して、真逆のSDGsという言葉で飾り立ている場合ではないのだ。人権侵害に対する謝罪と生態系の破壊に対して責任を取らせることが必要である。
(1) ブラジル: 緑の砂漠の冷酷な美しさ
(2) Rede Alerta contra Desertos Verdes: Carta Aberta à Procuradoria Geral da República – O Estado e a Aracruz Celulose precisam ser responsabilizados!
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSfone0exDvScQAdUzpsXaeW2wPQRKGWxf2xu7bEouUCO5GzjQ/viewform?pli=1
(3) セラードに関する国際民衆法廷
https://www.facebook.com/InyakuTomoya/posts/pfbid02qgoMiWi6oFWyfYAr3SmKHc8Gq8Vd6KQ8QBPWwTEtYxDmuvwZsPGWjuY9NP46gi5Vl