京都府がフードテック・スマートバレー計画

 ソリューション・ウオッシュとでも呼ぶべきか? 危機や困難な状況を解決しますよ、という名目で、政府や地方自治体の予算をつぎ込ませようとしている。でも、できようとしているのは新たな「原発村」の類? 問題は解決するどころかむしろ深刻化し、予算は枯渇して本当の危機に対応できなくなる…。
 何の話かというとフードテックのことだ。今、地方自治体がフードテック企業の誘致に走り出している。フードテックにはさまざまなものが含まれる。スマートキッチンやらフードロスを減らす技術も入るが、「ゲノム編集」食品企業や細胞培養肉・植物・菌の企業も。フードロスを減らす技術はいいとしても、今後の食・農業・社会を大きく変質させてしまう可能性のある技術を使う企業群に何の議論もなく、予算をつぎ込んでしまうというのは問題ではないか?
 しかも、その中心に京都がなってしまうかもしれない。京都府はフードテック・スマートバレー計画を打ち出して、南田辺西地区(京田辺市)にけいはんな学研都市を作り、フードテック企業を誘致し、産学官民でフードテック開発を進めるという(1)。

京都府フードテック・スマートバレー京都府フードテック・スマートバレー

 フードテック推進派の描く絵にはSDGsのアイコンがずらりと並ぶ(2)。環境のために、健康のために、貧困のない社会のために、果たして、フードテックが有効だろうか? また税で優遇したり、予算つぎ込んで育成したフードテック企業がうまくいく保障もない。それどころか、最近は破綻するケースも続出している。うまくいったとしても企業が儲かったとして地域にはどれほど還元されるだろうか? 多くの雇用を生むことは期待できず利益は内部留保を高めるだけ。羊頭狗肉どころか、危機をむしろ深めることになるのではないか? 果たして京都府議会はこうした問題をどう議論したのだろう?
 
 京都には京大から生まれた「ゲノム編集」魚を作るリージョナルフィッシュもある。魚の養殖にはさまざまな問題があるのに加えて、遺伝子を破壊された魚はさらに大きな問題を抱えうる。大企業の投資を受けて大々的にスタートしたが、市場はいっこうに開けない。そこで活用されているのが宮津市のふるさと納税の返礼品に「ゲノム編集」トラフグを使うこと。国内で行き詰まるリージョナルフィッシュはインドネシア進出を媒介にアジア市場をめざそうとするのかもしれない(3)。アジアで「ゲノム編集」魚が流通し出したら、これはアジアの漁業にとって大きな打撃を与えかねない。
 
 なぜ、社会的にも将来的にも懸念の大きなフードテック企業を地方自治体は誘致するのか。地方自治体でフードテック村ができたら、そこで働いたり関わる人たちとそれ以外の人たちとの分断も生まれる。その技術に、より反対しにくい状況が生まれる。フードテック企業からしたら地方自治体を巻き込むことは市民の過半数が反対するような技術を地域に定着させるための戦術になってくるのだろう。果たして関係する地方自治体はその危険を理解しているだろうか? そしてそうした自治体は京都だけに限らない。
 
 11月26日、京都市、11月27日、宮津市でこの問題に関する学習・討論会が開かれます。
 
11月26日 16:00〜18:00
緊急企画!印鑰智哉さんお話会 ゲノム編集食品とフードテック産業の最前線を知る
https://www.facebook.com/events/3398010800480568/

2022年11月27日日曜日 14:00
教えて印鑰さん!ゲノム編集と食の安全を学ぶ*語る*考える@宮津
https://www.facebook.com/events/1842927359373243/

 ぜひ、ご参加ください(会の詳細は主催者に聞いてください)。
 
 どうぞよろしくお願いいたします。
 
(1) 京都府「フードテック・スマートバレー」
https://www.pref.kyoto.jp/bunkaga/news/documents/teianshiryo_hujita.pdf
 
(2) Food Innovation Map 3.0…SDGsやら食料自給率向上やらフードロス削減、アップサイクルと言葉が躍っている。
https://cdn-xtrend.nikkei.com/atcl/contents/watch/00013/01952/01.png
https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/watch/00013/01952/

(3) リージョナルフィッシュ、海外展開へ。インドネシアの水産系スタートアップ企業ARUNA社と共同でJETRO「日ASEANにおけるアジアDX促進事業」への採択が決定
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000021.000060432.html
https://www.jetro.go.jp/news/announcement/2022/0e80b8da931addc9.html

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